歴史とジェンダー(5月9日、担当:平井和子)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の5回目の授業が、5月9日(木)5限に行われました。
今回は、個別領域ごとのジェンダーの問題を扱う各論部分の1回目になります。「歴史とジェンダー」と題して、女性史研究家の平井和子先生に、「日本史をジェンダーの視点で眺めてみれば」という問題意識から、古代から近代、現代に至る日本の歴史をジェンダーの視点、とくに女性史の流れに即しながら再検討していく、という講義を行っていただきました。フラッシュカードや豊富な史料を駆使しながら、原始・古代には高かった日本の女性の地位が、中国の家父長制の影響を受けた古代国家の成立や中世の武家政権の成立、さらには近代国家の確立とともに次第に低下してきた過程が、数多くの事例を通してわかりやすく論じられました。またその中で庶民層における性別役割分業以外のジェンダー多様な実態や、明治民法の家制度における女性の低い地位、日本国憲法24条の男女平等条項の意義の大きさ、選択的夫婦別姓をめぐる動向と日本の別姓の伝統への理解の乏しさなど、多彩なテーマが取り上げられ、歴史におけるジェンダーの視点の重要性を深く認識できる講義となりました。
次回は、自然科学系の学部学生諸君にも興味深いテーマとなる「自然科学とジェンダー」について、山田久美子先生が講義される予定です。
受講生の声
国際関係学部・1年・女性
ジェンダー(文化・社会的性)は、時代や社会のしくみ、考え方で変化してきて現代に至ったということを日本の歴史から知ることができた。私は、今まで日本史を勉強する機会は何度もあったが、ジェンダーの視点からその流れを眺めたことはなかった。女性が政治の中心にいた時代もあったのだから、日本で女性の総理大臣が輩出されないことも歴史の中にヒントがあるかもしれない。
また、以前「男女共同参画社会の形成と展開」の講義で、効率性が求められる産業社会になり出産や育児のため女性は”ウチ(家の中)”での仕事をするという考え方ができたということを学んだ。しかし、中世でも出産や月経など生まれ持った男女の性の違い(sex)が利用されジェンダーになったこともあったと知り驚いた。「男は/女は〜だから」と男女を分けてしまうのではなく、むしろそうした性の違いを男女で補っていける社会が”男女共同参画社会”に必要なことではないかと感じた。
国際関係学部・1年・女性
現代では考えられないほど、昔の日本では男女が平等であったことに大変驚いた。労働の面はもちろん、美の基準までもが同じだったのだ。この事実を上手に利用すれば男女平等参画社会の実現に近づけると思う。日本の教育現場では日本史を教える機会も多い。小学生のころから、今回の授業のようなジェンダー問題を組み込んだ学びを行えば、子どもたちにも根付いているであろう性別分業社会の不自然さに気が付く子どもがたくさん出てくるだろう。そしてそのような思いを抱いた彼らが社会に出ていく ことで、この日本の社会全体の意識も変化すると思う。
国際関係学部・1年・女性
前回の講義のときにも思ったのは「昔の方が女性が今よりも男性と平等に見られていた」ということです。確かに古代では女性が天皇を務めるなど今では考えられないことが普通に行われていて、昔の女の人たちがいきいきと自分たちの力で生活していこうという姿勢であったことがわかりました。また、日本がアメリカよりも先に男女平等を唱える条項を憲法に取り入れたにも関わらず、現代に至っては世界の国々の中で”平等”を実践できていない国となっているのが不思議であり残念に感じました。現代では女性にしても男性にしても世間の目が気になってしまって生きにくい社会になっているのではないかと思います。また、私たちは、”平等”や”ジェンダー”というと男性と女性の関係ばかりを考えてしまいがちですが、今日の話を聞いて男女の差だけでなく、同棲愛に関する問題とも向き合っていかなければならないと感じました。
国際関係学部・1年・女性
私はこの授業を受ける前からなぜ現代政治や社会の中心が男性であるのに、古代や中世では意外にも女性が活躍しているのだろうと疑問に思ったことがあったので、今回、このような話を聞くことが出来て良かった。特に女性の美の基準が男性と同じであったり、女騎や女性首長がいたりしたことは男女平等であったことをとても示していると思い、そのようなことは現在だととても珍しく感じられることだが、当時ではやはり意識せずとも当たり前のように行われていたことなのかと思う。現在は農業中心の社会から産業革命が起き、産業中心の社会となり、古代や中世とは人々の考えや社会が異なるけれども、少しでも以前の「男女平等意識」、「男女平等思想」を見習って現代に生かしていけたらいいと思った。
経営情報学部・2年・男性
今回の講義で歴史を振り返ってみると、現代で問題になっている男女共同参画社会の形成が、古代の時代にはすでに成されていたということを知り驚いた。また、文化、政治、経済において、まったく発展していない古代に、このような社会が成立していることから、現代社会がいかに複雑に発展を遂げてきたのかということを考えさせられた。男女共同参画社会を形成を進めていくためには、歴史をたどり、その時代の社会構造を研究してみることが必要ではないかと感じた。