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労働とジェンダー(6月6日、担当:居城舜子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の9回目の授業が、6月6日(木)5限に行われました。

 今回は、「労働とジェンダー」と題して、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事、静岡県労働委員会委員で、元常葉学園大学教授の居城舜子先生をお招きして講義をしていただき、最もジェンダーによる差別が激しい労働という領域の課題についてさまざまな角度から論じていただくことができました。

 授業は、「女性労働の現状と課題」が副題として掲げられ、現代日本の女性労働を取り巻く諸問題が多くの統計的データや資料に基づいて、実証的かつ批判的視点から論じられました。とくに女性労働の現状については、量的には拡大しながらコース別雇用管理と非正規雇用の増大の中でより底辺化してきている女性の労働者の実態や、先進国の中でずば抜けて大きい男女間の賃金格差、働く女性の多くが陥っているワーキングプアの深刻な実状などについて、詳しく説明がなされ、法律の整備にもかかわらずまだ残るその対策の不十分さが強調されました。とくに、アベノミクスと呼ばれる現政権の経済政策が喧伝される中、導入が取りざたされている「限定正社員」制度の問題点や、ポジティブアクションの限界などが厳しく指摘されました。そして、日本型雇用と伝統的な家族・社会保障システムに横たわるジェンダーがこうした現状を生み出してきた背景であり、そのシステムが機能マヒを起こしつつある現在、積極的でフレキシキュリティ型の労働市場と共働き・共家事・育児分担型家族という新しい日本のシステムへの転換が強く求められていることがまとめとして指摘され、これから社会へ出て労働市場に進んでいく学生たちに自分たちの課題を深く考えさせる契機となる講義となりました。

 次回は犬塚センター長による「恋愛・結婚・家族とジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・男性 

 今日の日本ではワーキングプアな人々が大勢いるのは理解できても、それを実感できていないのは自分がまだ大学一年であるからと思っている。労働市場の悪化は、不況時代にワーキングプアの人たちの足元を見る雇用者が多く発生してしまい、それがまだ続いているからだと思う。職業分野での男女差は、会社側が男女に能力差があると決め付けている面と女性がさらに上へと目指す人が男性よりも少ないことが原因であると思う。どちらにせよ、女性側が強く自己主張していかなければその差は埋まらないだろう。また、育児介護休業法など情報が開示されている中でそういった制度を知らない人がいるのは、それがあることを確認しないという意識の面と、それを知られる機会が少ないことによるものだと思う。

国際関係学部・1年・女性

 先生のお話を聞いて、社会のこととして知っているつもりだったことも、政府の政策の外側と内側の実態は違うことが多く、自分がこれから働く環境をしっかり見極めなくてはならないと感じた。過去には、税金などの面で専業主婦を優遇しながら、女性労働を進めるという相反することもあった。政府は人権とか、男女平等のために、望んでいることとは別の政策を出しているのかもしれない。だから、私たちは自分の生活を守るために賢い国民にならなくてはいけない。先生のお話で、正社員採用した職員をすぐに店長にし、管理職で残業手当をなくすということがあると聞いたとき、自分はそんなことにならないようにしたいと思った。また、先生が職場で仲間を作り、自分の身を守ったり、自分にぴったりの仕事を見つけたりして、職場で不可欠な存在になりなさいとおっしゃたので、参考にしてがんばりたい。

国際関係学部・1年・女性

 たとえ女性に対して法律ができたとしても、女性が自分自身で気づかなければならないし、規制が弱く育児介護休業法をとろうとしても実際はとれなかったり、結局女性への差別は消えることはない。これからも同じことで、何か新しいことに取り組まなければ変わってはいかないと感じた。そのためには現状を知ることも必要であり、自分も女性であるのだから女性全体のためはもちろんのこと、自分の将来のためにも労働とジェンダーについて考えることが必要だと思う。これから働く会社の見方を教えてもらったので、自分が就活する時には役立てたい。

国際関係学部・1年・女性

 私は労働における男女平等ということを考えるとき、世の中は男女平等にする為に前向きに動き、頑張っていると思っていたので、女性のほうが男性より給料が低く、男女平等の動きが進んでいるのは主に上層部の女性であると聞き、よく考えてみればそうであるが驚いた。また、以前の「法律とジェンダー」の講義の際に、法律によって雇用の際の間接的な男女差別は禁止されていると聞き、労働する中での差別もなくなってきてるのだと思い込んでいたので、男女平等参画社会を阻害するようなことが間接的に行われていると聞き、驚くと同時に自分の考えはとても浅はかなものであったと感じた。雇用の面では男女平等実現に向けての動きが進んでいるが、一歩「労働現場」に入ると賃金等で差別が多いことが分かったので、非正規・正規雇用の問題を新たに見直すなど今後も多くの対策が必要だと感じた。