恋愛・結婚・家族とジェンダー(6月13日、担当:犬塚協太)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の10回目の授業が、6月13日(木)5限に行われました。
今回は「恋愛・結婚・家族とジェンダー」と題して、犬塚センター長が講義を行いました。まず、「恋愛」は一般的な恋という感情とは違い、社会や時代の産物であり、恋愛には歴史があることが触れられ、恋愛の起源に関する歴史的考察が論じられました。そして、現代の恋愛の起源は12世紀南欧の宮廷社会で、トルバドゥール(吟遊詩人)たちによって作られ歌われた騎士物語の恋愛にあること、そこでは騎士と既婚の貴婦人との間で展開するロマンティック・ラブの物語が流行し、やがてそれが貴族社会で実践されるゲームとしての恋愛と結婚制度との両立につながっていったことが明らかにされました。しかし、近代社会の成立以降、解放された恋愛の情熱と既存の結婚制度をどう新たな形で両立させるかという課題の中から社会が生み出した装置が恋愛結婚であり、そのイデオロギーを基盤として、性別分業と愛情規範を特色とする近代家族のモデルが作り出されたことが示されました。さらに現代社会では、愛情のみに基盤を置く近代家族モデルによる家族が、それゆえに本質的な不安定さを免れず、性別分業の結果としてのコミュニケーションの欠落により、実はそのモデルが夫婦の愛情を構造的に不安定化させる要因となることが論じられ、現代の未婚化状況を踏まえて、これからの恋愛と結婚の行方は、未婚の若い世代がジェンダーに基づいた近代家族モデルをどれだけ乗り越えていけるかにかかっているという展望が最後に強調されました。若い学生の皆さんが、これからの恋愛と結婚について、ジェンダーを乗り越えながらどのように新たな形を作り上げていけるかという課題を、身近に感じ考えていくきっかけとなる講義となりました。
次回は、元静岡新聞社編集局文化生活部専任部長の川村美智先生をお招きして「マスメディアとジェンダー」について講義していただく予定です。
受講生の声
国際関係学部・1年・女性
今回の授業を受けるまで、恋愛に歴史があったなんて考えたこともなかった。中世ヨーロッパでは、恋愛は貴族が結婚とは別に楽しむためのもので、現代とは異なり、不倫状態だ。今日の未婚の男女が結婚をゴールとして行う恋愛にはたくさんのイデオロギーがあり、特に私は、性別分業について納得できる点が多くあった。性別分業によって男女の生活の場や時間が異なってくると、一番大切なコミュニケーションが減り、家族が不安定になってしまう。現代の結婚は、親やお金のことを考えず、愛情がお互いにあれば結婚できるので、二人の愛情を維持するためにも、コミュニケーションを大切にするべきだと思った。
国際関係学部・1年・女性
私は今までの授業の中で今回の授業に最も衝撃を受けた。なぜならば「恋愛結婚」に歴史があるのだということを知らなかったからだ。人を好きになる気持ちというのは本能的にほとんどの人が持つ思いであると思うから、2人が愛し合い、その先に結婚があるというプロセスは当たり前だと思っていた。その為、恋愛と結婚は分離されたものであり、その上、恋愛をゲームとして楽しんでいたのだと聞き、驚いた。映画やドラマで見る政略結婚について、今までは好きな相手と結婚できないことは非常に可哀相であると思っていたが、今回上記のことを知り、とても納得し、謎が解けたような思いがした。
そして近代の未婚化についてだが、やはり現代の「結婚」は愛情規範を重視しなければならないと思うので、女性の社会進出や経済力低下を踏まえて、「結婚」というものに重要な意味を見出せるような社会、家族モデルをつくっていかなければならないと思った。
国際関係学部・1年・女性
恋愛の始まりはどこの土地でも大体同じくらいだと思っていたので、ヨーロッパ、南仏、イタリアの方が日本よりも7世紀ほど早く恋愛が始まっていたと知って、とても驚きました。また、中性のヨーロッパでは障害が多く身分差のある2人の恋が求められていたというのが意外でした。しかしながら、現代でも障害のある恋や無償の愛を題材としたドラマや本が売り出されていて、時代が変わっても人々が理想とする恋愛の形はあまり変わらないのかなと思いました。日本においては、戦後の高度経済成長期に形成された近代家族のモデルの形にとらわれてしまって、逆に家族間の関係や愛情そのものが不安定化してきてしまい、離婚率の増加に繋がってしまったのがとても残念だと思いました。そのために、結婚を悲観した人々の未婚化が進んでしまったのは悪循環であるので、このながれを断ち切るためにも私たちの中に根付いた近代家族のモデルのイメージを取り除き、新しい家族像を作り上げることが大切なのではないかと感じました。
薬学部・1年・男性
恋愛結婚が理想とされる現代では、それが一番不安定なものであるというのが皮肉なものである。「家庭をもつ」という言葉は、昔は性別分業時代の経済力のある男性が言っていたように思われるが、今は、「もつ」より、「築き、支える」と男女ともに当てはまる時代に変わってきた。独身でいる人が、適当な相手に巡り会わないというのは、仕事している間には会えず、さらにその時間が長い・外部との接点が少ないことがあるのかもしれない。しかし気になったのは、結婚資金が足りないという理由で結婚していない、としているのに男女差がある。収入が減り、それでも必要資金が不景気に入る前と変わらない・男性に求められる金額が高いなど、男性側に資金面で依存していることも考えられるのではないか。