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男女共同参画社会の形成と展開〜世界と日本の動き(5月1日、担当:犬塚協太)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の3回目の授業が、5月1日(木)5限に行われました。

 前回、前々回に引き続き今回も犬塚センター長が担当し、主に性別役割分業の歴史的展開と男女共同参画社会への転換を中心に、世界と日本の動きについて講義が行われました。とくに、性別役割分業というジェンダーが近代産業社会以降に広まったこと、その背景には、近代の産業構造が農業中心から工業中心に変化し、家族の内と外が異なる労働の場として分離したこと、家族の外のペイドワークに男性、内のアンペイドワークに女性を分離するイデオロギーが資本主義市場経済によって浸透し、女性は愛情という動機によってアンペイドワークに従事することを自明視する規範と意識が浸透したこと、などが論じられました。さらに20世紀中ごろまでに成立したこの性別役割分業社会のあり方に対し、とくに第2波フェミニズムの思想と運動が男女の実質的平等の実現を求めて登場したことで、性別役割分業というそれまでのジェンダーによって作られてきた男女の不平等構造からまず女性、次いで男性の解放が求められて男女共同参画社会への新たな動きが1980年代以降進められてきたこと、なども説明されました。

 次回は、これまでのジェンダーから男女共同参画社会の実現が求められるようになった世界と日本の近年の動向を、男女共同参画社会づくりに関わる法制度の展開やその課題などを中心に、伊藤一頼先生(国際関係学部)により講義が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 性別分業が成立した19世紀でも、労働者階級は共働きだった。後に生活水準が上昇し、全体的に性別分業が普及したが、何についても例外はある。現代でも、性別分業など成立しないひとり親の家庭や、貧困に苦しむ人々がいる。また、男女共、それぞれがやりたいことをやれるような世の中が求められている。世界を本当に男女共同参画社会にするには、古い考えを人々の意識から取り除くことと、女性の労働条件の改善、また、働きながらでも育児ができる施設の充実等が必要と思う。実質的な政策が必要になるが、まずは私たちが性別で区別しあうことをやめ、 意識の上での平等を成立させることが何より大切だと思う。

国際関係学部・1年・女性

 性別役割分業が行われる要因について、私は単純に男女の体力の差ゆえに自然にそうなったのだと思っていた。しかし今回の講義で、女性が社会・経済の流れにしたがって、意図的にアンペイドワーカーとされてしまったことを知って、全く不条理ではないかと思った。

 しかし、このようなイデオロギー操作は日常的に社会で行われているのだと思う。特にジェンダーに於いては、そのような操作が大きく社会に反映されてしまう。今回は比較的に女性のほうが肩身の狭い思いをさせられているように感じたが、男性も同じように矛盾を感じているのではないだろうか。

 実質的男女平等の実現は時間がかかるだろうが、必ず達成させなければならない目標であると思う。

薬学部・1年・女性

 今回の授業を受け、今の時代の女性は「結婚したら夫の為、家族の為に美味しい食事を作り、部屋を綺麗に保つことができる女性が理想的な妻の姿なのだ」という気持ちをどこかで抱きつつ、「女性は妊娠、出産のために仕事を続けられなくて不平等だ」という怒りも心の中にある、葛藤の時代なのだと感じました。また、“良妻賢母”の考えは国の政策としての教育を通じて作り出されたものなのだという事実にショックを受けました。

 今、女性も労働力として働きやすい環境づくりをしようという国の動きもありますが、根底にはやはり「家事、育児は女性の仕事だから女がするべき」という考えは根強くあり、「女性には働いてほしいけど、家事・育児もしっかりとしてほしい」という考えの男性も多いと感じます。

 まず女性の労働条件を男性と同様に良くする事と、学校教育や社会人への教育として男女共同参画社会の考えを一般的なものにする事が重要であるのではないかと感じました。

国際関係学部・1年・女性

 私は、性別分業や女性差別というのはずっと昔からあるものだと思っていた。しかし、前近代社会では共働きであったため、性別によって役割が分けられるなんていうことはなかった。性別分業が起こってしまったのは、社会の移り変わりが原因であったことが分かった。社会が産業化したことによって、女性の労働力では非効率であると考えられたことに怒りを覚えた。たしかに、男性には仕事に専念させ女性には家庭を優先させれれば、効率的で産業化社会には最適かもしれないが、人には適性というものがあるのだから、性別で役割を分けてしまうのはよくないと思う。また、性別分業をすることで効率的に生産活動を進めるために、教育方針すらも変えてしまったこともおかしいと思う。なぜ、「女の幸せは結婚」などと学校で習わなければいけないのか違和感を覚える。様々な歴史を経て、現在は世界的に男女平等を実現しようとしているので、私もそうなるように努めたい。

食品栄養科学部・1年・女性

 男女共同参画社会の実現の必要性を認識したとき、どうして性別分業が形成されていったのか疑問に思っていた。性別で役割が異なっていったのは社会を取り巻いている思想が関わっていたことが今回の講義でわかった。かつて、共同体として生活をしていたときは性別分業は成立していなかったことには驚いた。確かに、身近な人たちと生活におけるほぼすべてのことを営むためにはどの仕事であっても、みんなが協力する必要があった。しかし、工業化に伴い、人々には細かな役割が与えられるようになったことから性別分業が始まったのではないかと思った。自由・平等が掲げられ、自分で職業を選択していると思っていても、実は教育や上層階級への憧れや、周囲の環境が知らず知らずのうちに性別分業への考え方にさせていたのかと思うと少し恐ろしい。今がもう一度平等について考えるときだと感じた。

食品栄養科学部・1年・女性

現代の基本的考え方は性別役割分業社会となっていて、それは今でも、「専業主婦になるのが夢」「結婚したら出来るだけ外の仕事は辞めたい」という事を言う人が多い所からも分かっていました。しかしその考え方がいつから始まり、どの様にして広まっていったのかという事まで掘り下げて考えたことはありませんでした。その様に、意図的に作られた考え方が、人々がその事に疑問を持たない程に深く根付いているという事に衝撃を受けました。そうした常識化してしまったものを覆すのは難しい事だと思いますが、この先の世界のあり方として性別役割分業社会は変えていくべきだと思いました。