男女共同参画社会と法制度(5月8日、担当:伊藤一頼)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の4回目の授業が、5月8日(木)5限に行われました。
今回は国際関係学部准教授の伊藤一頼先生が担当され、「男女共同参画社会と法」と題して、法律学の観点から、男女共同参画社会を築き支える法制度のあり方について、その特色と課題が論じられました。男女雇用機会均等法と育児介護休業法の成立・改正とした日本における女性差別撤廃への歩みについて、条文の解釈だけではなく、間接差別禁止への動きや育児・介護休業に関する権利の広がりを通して、具体的かつ詳細な説明がなされました。また、国際社会における女性差別撤廃への取り組みについては、女性差別撤廃条約と同条約選択議定書に焦点を当て、男女の平等を基礎とする人権と基本的自由の認識・共有・行使が重要であることが指摘されました。さらに、日本が女性差別撤廃条約選択議定書に加盟していないことなど、国際社会における女性差別撤廃の実現が容易ではないことについても指摘がなされ、全体を通して法律を学ぶことが自分の身を守る道具になり、さらには日本や世界の社会を良い方向に変えていく力になることが論じられました。
次回は、自然科学系の学部学生にも興味深いテーマとなる「自然科学とジェンダー」について、生物学者の山田久美子先生の講義が行われる予定です。
受講生の声
食品栄養科学部・1年・女性
男女共同参画社会の実現のためには、法律の制定はなくてはならないものだと思った。しかし、法律があるからよいというわけでは決してないということも思った。私の知り合いに育児休暇をとりたかったが、会社からの圧力や周りの人達からの圧力を恐れて休暇をとれなかったという人がいた。しかし今回いただいた資料には、法律によって育児休暇が認められていると書かれている。きちんと法律を熟知していれば、例え会社との間にトラブルが起きても対処できるはずだ。私も自分の権利を守るために、もっと法律について勉強したいと思った。
薬学部・1年・女性
まず、日本で初めて女性差別撤廃への動きが制度として規定されたのが1985年と、まだ30年近くしか経っていない事に驚きました。日本で女性差別の撤廃を‘目指した’規定が成立した年から約20年も前に、世界では性別による差別を‘禁止した’国際人権規約が定められたという事実を知り、日本は世界の他の国と比べても女性差別が雇用などの場において特に根強く残っていたのだと知りました。
さらにそれを変えようとする日本国内の動きも、国連の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関わる条約」に加盟した事によりようやく形式上の規約が定められるという、とても消極的なものであった事にショックを受けました。
ただでさえ弱い立場にあった女性の権利を主張し、規約として定めるに至るには大変な苦労があったと思います。国連の条約への加入を通じた外からの監視の目や圧力があったからこそ、その第一歩を踏み出す事が出来たのだと思います。世界の国々の動きに常に目を向けて、多くの国と互いに共通の目標を掲げて協力し合う意味の大きさを実感しました。
国際関係学部・1年・女性
男女共同参画社会を実現していく上で、法について深く知ることは必要不可欠だと思う。法について知らなければ、私たちは自分が差別を受けている可能性や、逆に他者を差別している可能性に気づくことが出来ないからだ。また、法を知ることによって、「自分が差別を受けている」と確信した場合には、この義務規定である法に違反するとして、他者を訴えることができる。男女共同参画社会の実現のためには、私たちがただ単に「差別をしない」という意識を持つだけでなく、このように法を知り、差別についての規定を正しく理解し、そして自分や他者 のために利用していかなければならないと思う。
国際関係学部・2年・女性
法律に「女性差別の禁止」と記されていても、なかなか差別はなくならないと思いました。
市民(特に女性)が声をあげて、運動を起こさなければならないと思います。また、もし運動を起こしてもそれが女性だけというのも男女の溝を感じます。なので、男性も一緒になって立ち上がる必要があると思います。きちんと女性の立場に立ち、男女共同参画社会という内容を理解することが大切だと思います。
このような法律を含めたすべての法律はすごく大切だと思うけれど、常に法律を意識して生活しているかと言われれば、「はい」とは言えません。たとえば夫が毎日働き、妻が専業主婦という家庭はたくさんあると思います。このような状況は男女共同参画社会基本法の「家庭生活における活動と他の活動の両立(第6条)」に反しているのではないかと思いました。
法律に記載されていることと、市民の生活の実態に隔たりがあると感じました。
国際関係学部・1年・女性
「ポジティブ・アクション」という言葉は今回初めて耳にしました。女性差別を撤廃させるには、まず男性と同じスタート地点に立つように優遇しなければならないほど女性は不平等の元に生きていたのかと感じ驚愕しました。女性だけ優遇することは男性差別ではなく、平等へと向かう道のりなので、男性が「女性だけを優遇するのはずるい!差別だ!」と言っているところを見ると、とても残念に思います。今は法や制度により女性差別撤廃が進められているので、いつかそれが実現することを願っています。