Top / 事業紹介 / 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」 / 2014年度「男女共同参画社会とジェンダー」歴史とジェンダー

歴史とジェンダー(5月22日、担当:平井和子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の6回目の授業が、5月22日(木)5限に行われました。

 今回は、個別領域ごとのジェンダーの問題を扱う各論部分の2回目になります。「歴史とジェンダー」と題して、一橋大学特任講師で女性史研究家の平井和子先生に、「日本史をジェンダーの視点で眺めてみれば」という問題意識から、古代から近代、現代に至る日本の歴史をジェンダーの視点、とくに女性史の流れに即しながら再検討していく、という講義を行っていただきました。

 フラッシュカードや豊富な史料、パワーポイントの画像などを駆使しながら、原始・古代には高かった日本の女性の地位が、中国の家父長制の影響を受けた古代国家の成立や中世の武家政権の成立、さらには近代国家の確立とともに次第に低下してきた過程が、数多くの事例を通してわかりやすく論じられました。またその中で、男女の経済的格差の広がりが売買春を生み出してきた経緯や、男女混浴の慣習に見るような欧米の影響を受ける以前の日本の大らかなセクシュアリティの実態などがわかりやすく示されました。そして、庶民層における性別役割分業以外のジェンダー多様な実態、明治民法の家制度における女性の低い地位、日本国憲法24条の男女平等条項の意義の大きさ、選択的夫婦別姓をめぐる動向と日本の別姓の伝統への理解の乏しさ、現代日本のジェンダー・ギッャプ指数による国際的な順位の低さなど、多彩なテーマが取り上げられ、歴史におけるジェンダーの視点の重要性を深く認識できる講義となりました。

 次回は、「マイノリティとジェンダー」について、国際関係学部の藤巻光浩先生が講義される予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・女性

 古代から現代までの様々な時代における名を馳せた女性たちと女性史を知る事により、女性差別の考えがどのように浸透していったのかという流れが良く分かりました。つまり、多くの女性天皇を生み出し男女がほぼ対等であった古代から始まり、次第に女性の社会的な権力が低下していき、その後に貴族層の家庭内においての女性の地位の低下、そしてそれが一般的に浸透していき「男は仕事/女は家庭」という性別役割分担が形成され、労働の面でも女性は家族の為に家にいて家事・育児をするべきであるという考えが浸透していったという流れです。

 私は今まで、現代に女性差別は根強く残ってはいるものの、以前と比べたら改善してきていると思っていました。しかし、私の指していた‘以前’とは近代における日本史上で、最も女性差別が公然と行われていた時代のことを指していたのだと気づきました。もっと昔の古代から中世の状況と比較すれば、現代の方が女性差別の状況は深刻であるという事は明らかです。その事実にはっとさせられ、自分の価値観が変わりました。

国際関係学部・1年・女性

 最初に卑弥呼や推古天皇などの名前が挙げられ、そういえば古代の日本は女性の地位が高かったということを思い出した。今は、女性議員も少ないし、頻繁に代わる総理大臣も女性が就任したことは一度もない。男女平等を目標に掲げているにもかかわらず、それを推進している人の中に女性の割合が少ないのはおかしいと思う。また、平安文学でたくさんの女性が活躍したが、本名が残っている人いない。高校生のときに当たり前のように習っていた日本史の内容でも、ジェンダーの目線から見ると全く違う見方や時代背景が見えてくる気がした。今でも明治の民法の名残のような考え方が残っているような気がする。例えば、結婚をする際の女性の処遇などだ。男女共同参画社会を実現させるために、人々の意識から変えるのも重要だと思う。

国際関係学部・1年・女性

 私には以前、自衛隊のパイロットになりたいと思っていた時期があった。しかし、身長制限を満たせず、また、親からの「女のやる仕事ではない」との猛反対を受けて結局諦めた。当時は、昔からの考え方だし、親の言うことも多少わかると思っていたが、今日の講義で女性の武者がいたことや、男女の差別がなかった時代のことを知ってとても驚いた。私たちが、昔から続いていると思っていた考え方は、古代以来の様々な思想の流入によってねじ曲がってしまっていたものだと知った。男女共同参画社会を唱える現代の社会には、性差別についての新しい見解も必要かもしれない。しかし、過去の史実を振り返ることによっても、私たちは男女平等な社会を作るヒントを得られるのだと思う。

経営情報学部・1年・女性

 歴史を追って見てみると、中国の家父長制の浸透につれて女性の経済的権利が弱まり、地位が低下していく様子がよくわかりました。また、江戸時代後期や明治期の制度制定には、欧米列強の影響を強く受けていること、戦後には男女平等を目指す世界的な流れに影響を受けていることなど、良くも悪くも外国に流されやすい日本の特徴が見えたように感じました。しかし、現在日本の女性議員が減少していたり、「男が仕事、女は家庭」賛成が反対を上回ったりと、ジェンダーギャップが大きくなりつつあることを知り、不況や就職活動が困難なことなどの経済的な面や、また、保育所や医師の不足から来る育児や介護への不安なども女性の社会進出の意欲を削いでいる可能性があるのではないかと考えました。根本的な男女平等のための条約制定や法整備などを世界の一員として進めていくことも大事ですが、少子化、高齢化など日本特有の負の部分を解消していくこともジェンダーギャップを埋めていくためには重要だと思います。

食品栄養科学部・1年・女性

   昔と今で大きく女性のついていた地位が違うことに驚いた。歴史的文献や遺品からそのようなことがわかるというのは面白い。日本は島国であるため、独自の文化や生活形態ができていたのであろう。世界とは男女に対する見方が大きく異なっており、先進国に追いつこうと模倣して外国の文化を取り入れていったために、大きく変化してしまったことがわかった。昔は古事記にも見られるように女性にも力があった。古事記では最高神が女性であることが大変興味深い。世界と関わりを持たず、共同体の中で生活していたなら、現在のようなジェンダーは生まれなかっただろうか。それはグローバル化した現代ではわからない。様々な考え方を取り入れて今後私たちがどのように生きていくかを考える必要があると感じた。