Top / 事業紹介 / 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」 / 2014年度「男女共同参画社会とジェンダー」恋愛・結婚・家族とジェンダー

恋愛・結婚・家族とジェンダー(6月26日、担当:犬塚協太)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の11回目の授業が、6月26日(木)5限に行われました。

 今回は「恋愛・結婚・家族とジェンダー」と題して、犬塚センター長が講義を行いました。

 まず、「恋愛」は決して一般的な恋という感情とは違い、歴史的、社会的現象であり、恋愛の起源に関する歴史的考察が論じられました。そして、現代の恋愛の起源は12世紀南欧の宮廷社会で、トルバドゥール(吟遊詩人)たちによって作られ歌われた騎士道の情熱恋愛にあること、そこでは騎士と既婚の貴婦人との間で展開する恋愛物語詩が流行し、やがてそれが貴族社会で実践されるゲームとしての恋愛と結婚制度との両立につながっていったことが明らかにされました。しかし、近代社会の成立以降、ジラールの「欲望の三角形」に示されたように解放され肥大化した恋愛の情熱と既存の結婚制度をどう新たな形で両立させるかという課題の中から社会が生み出した装置が恋愛結婚であり、その結果形成されたロマンティック・ラブ・イデオロギー、母性イデオロギー、家庭イデオロギーを基盤として、性別分業と愛情規範を特色とする近代家族のモデルが作り出されたことが示されました。さらに現代社会では、シングルのライフスタイルの可能性が広がり、愛と性と生殖を統合し愛情のみに基盤を置く近代家族モデルによる家族が、それゆえに本質的な不安定さを免れず、性別分業の結果としてのコミュニケーションの欠落により実はそのモデルが夫婦の愛情を構造的に不安定化させる要因となっており、さらに恋愛の自由化による選択可能性の拡大がかえって結婚相手の選択を困難にしていることが論じられ、現代の未婚化状況を踏まえて、これからの恋愛と結婚の行方は、未婚の若い世代がジェンダーに基づいた近代家族モデルをどれだけ乗り越えていけるかにかかっているという展望が最後に強調されました。若い学生の皆さんが、これからの恋愛と結婚について、ジェンダーを乗り越えながらどのように新たな形を作り上げていけるかという課題を、身近に感じ考えいくきっかけとなる講義となりました。

 次回は、デートDVファシリテーターで立命館大学などを非常勤講師を務められている伊田広行先生をお迎えして、「性暴力とジェンダー」について講義していただく予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・女性

 今回は結婚や恋愛についての講義で恋愛をこのような観点から見たことがなかったので、とても新鮮でした。恋愛結婚にも起源があり、それが歴史的に見ると割と最近のことでしたので大変驚きました。しかし、恋愛結婚から3つのイデオロギーが生まれてしまい、これが現代のジェンダーにつながってしまっています。私も将来自分の好きな方と結婚したいという希望がありますが、近代の家族のような夫は外で働き、妻は家で家事をするというジェンダーむき出しの家族ではなく、この講義を通して学んできた夫も妻も外で働き、子育てや家事も二人でするような新たな理想とされる家族を築きたいと思いました。

 またそのような理想とされる家庭でも、ジェンダーが出てくるかもしれません。いつも俯瞰から物事を見てジェンダーというものを少しでも無くしていけたらいいと思いました。

薬学部・1年・女性

 中世では恋愛と結婚は全く別のものとして捉えられていたという事実に驚きました。確かに中世を舞台にした洋画でも、日本の戦国時代の話でも、結婚は親に決められた相手とするものであり、既婚でありながら他に恋愛をする相手がいるというストーリーの構成が多いように思います。今の日本で主流である恋愛結婚というスタイルは昔からあったものではなく、身分の差が小さくなる事により、恋愛がより広く公のものとして捉えられるようになった結果であると知りました。また、既婚者が配偶者以外の人と恋愛をするという昔のスタイルから、未婚者が結婚をゴールとする恋愛をするというスタイルに変わったことも大きな変化です。

 フランスの哲学者ルソーなどにより語られた、“女性は出産・子育てができる特別な存在なのである”といった女性を特別な存在として称賛する考えから、徐々に女性が子育てをするというスタイルが確立されていきました。また、地域の皆で子育てをするという隔たりのない社会から、家族の中で子育てするという社会に変わっていくことにより、男性は外に仕事に出て女性は家で子育てをするというスタイルが確立されていったという流れが分かりました。

 結婚というと、今の日本社会では女性が嫁入りをするという形式をとる夫婦が多いです。これからの時代はジェンダーに伴う結婚観を変えて、もっと選択の自由を増やし、その自由なスタイルを良い事と捉えられる社会になれば良いと考えます。

経営情報学部・1年・女性

 少なくとも日本では多くの人が浮気や不倫は悪だと感じているでしょうし、家族の間には愛情が不可欠だと思っているはずです。今回の講義で愛情のみを基盤とした家族は崩壊しやすいと学びましたが、今後も恋愛結婚の文化が無くなることはないと思われます。そこでまず考えられることは愛情の種類についてです。「愛しているなら仕事をしろ、家事をしろ」という動機付けのための愛ではなく、「愛しているから、好きなことを自由にやって幸せになってほしい」という愛の形の方が魅力的に見える上、そこにはジェンダーの解消が不可欠となります。しかし、家庭が続くためには相手だけでなく自分自身の幸せも必要であり、相手と自分の幸福が食い違っていたら、どんな形の愛情でも持続するのは難しいでしょう。ましてや、かつての宮廷社会のように不倫を容認するような文化は簡単には生まれないはずです。例えば、現在の男女格差が完全に解消され、男女が平等に働くようになったら、この「食い違い」はさらに大きくなるのではないでしょうか。一人一人の幸福を実現するためにはジェンダーの見直しは絶対に必要ですが、「家庭の持続」、「少子化問題の解決」という視点で見ると、恋愛結婚が完全にメジャーになった社会でこれを実現することは大変に難しいことだと感じました。

食品栄養科学部・1年・女性

 現代の結婚は恋愛結婚が主流です。私は、いつの時代もそれが普通だと思っていました。そのため、今回の講義で恋愛の起源を知って衝撃を受けました。貴族にとって恋愛とは結婚に結びつくものではなく、既婚者が恋人と楽しむゲームという認識だったなんて、現代の認識とは全く逆です。近代家族におけるジェンダーは、貴族特有のものであった恋愛を、市民・民衆の文化にも取り入れる過程で生まれました。母性イデオロギー、家庭イデオロギーという概念を持ち出し、女性を家内領域に押し込めるようになったのです。そうして愛情を重視する構造をつくりあげたにもかかわらず、性別役割分業はコミュニケーションの欠陥を生み出しており、愛情の弱体化は必至です。これはとても矛盾していると思います。最も身近な存在である家族の中でジェンダーが生まれているせいで、人々のジェンダーに対する認識が変わりません。家庭からジェンダーを無くすことで、社会でもジェンダーが消え、男女共同参画社会が実現できるのではないでしょうか。