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マイノリティとジェンダー~特別講義とミニ・コンサート(7月17日、担当:会津里花)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の14回目の授業が、7月17日(木)5限に行われました。

 今回は、「マイノリティとジェンダー~特別講義とミニ・コンサート」と題して、「一五一会」インストラクター/ベーシストで、トランスジェンダーの会津里花さんをお迎えして、マイノリティとジェンダーについての特別講義と自作の歌を中心とするミニ・コンサートを行っていただきました。

 はじめに、犬塚センター長の紹介の後、特別講義として、一五一会の演奏と自作の歌を織り交ぜながら、会津さんによるトランスジェンダー(MtF)として、そしてバイセクシュアルとしての自分の人生のさまざまな体験と思いとが語られました。

 会津さんからは、ジェンダーを「体の性別」、「心の性別」、「らしさの性別」、「好きになる性別」の4つの次元に分けてそれらの組み合わせとしてとらえる視点が示され、男性と女性は決して2つに分断されるものではなく、両者は連続的で切れていないことが強調され、性別についての二分法的な発想の誤りへの注意がなされました。そして、自分のこれまでの人生のプロセスを通して、自尊感情がなかなか持てなかった子ども期の心理状態や、プライベートな領域での人との出会いと別れ、トランスジェンダーとして、バイセクシュアルとして、どのような生き方を経験してこられたか、その中で自らの現在の立場をどのように見出し築いていかれたかが詳しく語られ、性的なマイノリティの人々への差別の根源として「無知プラス知らないことを認めないこと」という態度が偏見や差別を生みだすことが指摘されました。その上で、1人ひとりの性のあり方の尊重と、性の多様性をちゃんと理解していくことの必要性、人が相互に分かりあうための「想像力」の大切さなどが強調されました。その他にも学生に感じ受け止めてほしい多くのメッセージもさまざまに語られました。

 合間には自作の歌の演奏も織り込まれ、受講した学生たちは、会津さんの率直で明るくわかりやすい語りと、さまざまな思いのこめられた素晴らしい歌を楽しみながら、マイノリティとジェンダーについての課題の広がりの大きさと大切さについて、あらためて認識を深めることができました。

 次回は、犬塚センター長が講師となり、授業全体を振り返って全体を総括し、男女共同参画社会とジェンダーについてのまとめを行っていく予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・女性

 体と心とらしさの性別は必ず一致するものであり、好きになる性別は自らと反対の性別であるという考え方が私たちの社会には根づいてしまっている。そのことによって「自分は普通の人とは違う」と苦しんでしまっている人がいることを知った。時代や環境によって性別の捉え方も変わるため、表現の仕方は様々になることがわかった。自分が今まで知らなかったものが突然現れたら、当然驚いてしまうのだろうが、知らなかったことを認めないのではなく、相手を知ろうと努力することが大切だと感じた。ジェンダーに苦しみ、多くの経験をされてきた会津里花さんの弾き語る曲はどれも人を惹き付けるものであり、貴重なお話を聞くことができて良かった。

経営情報学部・1年・女性

 今回、ずっと弟や妹の世話をして自分は一生子供を作らなかったというある動物のお話があり、その中で先生が「たとえ子供を産まなくても社会に貢献できることはたくさんある」と仰いました。私は今まで同性愛者について、誰もが差別されることなく平等に生きていければ良いと単純に考えていました。しかし、子供が産めないこと、体の性別・心の性別・好きになる性別のギャップ、家庭内での立場と性のギャップなどから自分を嫌いになってしまったりと、周りの人間の理解や変化だけでは必ずしも変えられない、当事者の方々のコンプレックスや葛藤があるのだということや、それらを乗り越えて社会で活躍できる道を見つけている人、探している人がたくさんいるのだということを先生の言葉で考えさせられました。

 先生が歌ってくださった「Serenity prayer」という曲に、『変えられないものを受け入れる落ち着きと、変えられるものを変えていく勇気と、それを見極める賢さと』という歌詞がありました。「変えられるものを変えていく勇気」が大切であることは気付きやすいですが、「変えられないものを受け入れる落ち着き」の大切さに気付くのは難しいことだと思います。よく、「人は変われる」と言いますが、性格や信念など心を変えていくことはそう簡単にできることではなく、変えられない自分を責めたり、嫌いになったりします。「変わらなくても良い」という選択肢を選んだ時、そこからどうやって幸せに生きていくか、どうやって自分を好きになれるかを考えることはとても難しいし、一歩間違えれば「変えられること」を「どうせ変えられない」という諦めで誤魔化してしまうかもしれません。

 先生が恋愛経験を語られていた時に、「好きになった相手がたまたま男だった、女だった、というだけのこと」と仰った時にとても素敵な言葉だと思いましたが、「それでいいんだと思えるようになったのは最近だ」とも仰っていました。周りにとって大事なのは、変えられないものと、変えられるものを見極めようともがいている人たちに手を差し伸べ、「あなたはそのままでいいんだ」と励ましたり、その人が変わっていく手助けをしていくことであり、それが人間一人一人にも、国や社会にも必要なことではないかと感じました。

国際関係学部・1年・女性

 実際にジェンダーに苦しんだ会津さんの言葉は、とても重みがありました。会津さん本人の経験や思いをたくさんの歌で歌ってくださりましたが、私の知らなかった世界や想像つかないような思いに衝撃を受けました。そして、ジェンダーの偏った見方は私たちが作り出しているものだということを改めて感じました。会津さんは「世の中には男と女の2つしかいないと思っている人が多い」とおっしゃっていましたが、その通りだと思います。2つしかない、というより、そうではない人がいるとわかってはいても、「変わった人、特殊な人」という見方が多くの人にあるのだと思います。心の性別にしても好きになる性別にしても、「男と女」だけではなく色々な人がいるということを皆が理解し、マイノリティに悩む人も自分を好きになれる世の中になってほしいです。