まとめ(7月24日、担当:犬塚協太)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の15回目の授業が、7月24日(木)5限に行われました。
今回は、「まとめ」と題して、これまでの14回の授業を総括するために、全体を通して学生の皆さんが疑問に感じた問題を示してもらって、それに犬塚センター長が答える、という形で進められました。
そして、学生が提起した「男女平等が進んでいる北欧諸国と日本の違いはどうして生まれたのか?」という疑問がテーマとして取り上げられ、1960年代まで大きな差がなく、どちらも性別分業的な考え方が支配的だった北欧諸国と日本が、1970~80年代以降、福祉国家の行き詰まりを打開する上で大きく分かれ、社会の根本的な仕組みを改め、男女を問わず全員が能力を発揮して仕事と家庭を両立しながら活躍し、高い福祉水準を支える再分配システムを作り出す社会を目指した北欧諸国がジェンダー平等を積極的に推進する道を選んだのに対し、日本はそれまでのジェンダーによる男女不平等な意識やシステムを根本的に転換することなく、女性による家族内の無償のケア労働負担で乗り切ろうとした結果、ジェンダー平等の追求が大きく立ち遅れ、今日のような差になってしまった、という歴史的経緯が説明されました。またそれに関連して、エスピン=アンデルセンの「福祉レジーム論」が援用され、「社会民主主義レジーム」を代表する北欧諸国ではジェンダー平等も最も進行するのに対し、「保守主義レジーム」に加えて急激な「自由主義レジーム」化が進む日本ではジェンダー平等の進行も遅れ、偏った形になりやすい背景が説明されました。
またその他にも「伝統としての日本文化に存在するジェンダーを一概に否定してもよいのか?」という疑問も学生から提起され、「伝統の創造」という視点による「伝統」の批判的相対化の大切さや、伝統文化よりも重視すべき価値としてジェンダー平等を求める立場との対話の重要性などが論じられました。
こうして、日本から世界まで視野を広げ、過去から未来まで見据えて、あらゆる領域でのジェンダーの平等の意義を追求してきた授業全体のまとめが行われました。
今後とも、センターとしてはこの科目の実施を通じて、全学の学生に男女共同参画社会とジェンダーについて、自分で主体的に考え社会の中で行動する上での基本的知識と視座を提供していきたいと考えています。