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歴史とジェンダー(5月28日、担当:平井和子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の6回目の授業が、5月28日(木)5限に行われました。

 今回は、個別領域ごとのジェンダーの問題を扱う各論部分の2回目になります。「歴史とジェンダー」をテーマに、一橋大学特任講師で女性史研究家の平井和子先生に、「日本史をジェンダーの視点で眺めてみれば---」というタイトルで、古代から近代、現代に至る日本の歴史をジェンダーの視点、とくに女性史の流れに即しながら再検討していく、という講義を行っていただきました。

 フラッシュカードや豊富な史料、パワーポイントの画像などを駆使しながら、原始・古代には高かった日本の女性の地位が、中国の家父長制の影響を受けた古代国家の成立や中世の武家政権の成立、さらには近代国家の確立とともに次第に低下してきた過程が、数多くの事例を通してわかりやすく論じられました。またその中で、ヨーロッパ人の目から見た近世庶民女性の高い社会経済的地位を持って自由に活躍する様子や、男女混浴の慣習に見るような欧米の影響を受ける以前の日本の大らかなセクシュアリティの実態などがわかりやすく示されました。そして、庶民層における性別役割分業以外のジェンダー多様な実態が、近代になって大きく変化し、女性の地位が最も低下した時代を迎えた実態が、明治民法の家制度における女性の低い地位を中心に詳しく論じられました。さらに、日本国憲法24条の男女平等条項の意義の大きさ、選択的夫婦別姓をめぐる動向と日本の別姓の伝統への理解の乏しさ、現代日本のジェンダー・ギッャプ指数による国際的な順位の低さなど、多彩なテーマが取り上げられ、最後に、国際的に顕著に低い日本の若者の殺人者率から見て、男性が徴兵され兵士となることに男らしさの基準が存在した戦前と異なる、戦後70年にわたる平和な時代の意義が示され、歴史におけるジェンダーの視点の重要性を深く認識できる講義となりました。

 次回は、「教育とジェンダー」について、元静岡県立吉原高等学校長でジェンダー研究家の奥山和弘先生が講義される予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・女性

 今回の授業を受けて、日本は外国から文化や技術などを導入するたびごとに女性蔑視の考えも導入してきたのだと感じた。また、授業の最後に日本の若者の殺人者の出現率が低くなってきており、男女別の検挙数の差が小さくなってきていることについて、ジェンダーの犠牲となったのは女性だけではなく男性も「『兵隊さんモデル』であるように」という男性に対するジェンダーの犠牲になってきたのではないかとも思った。

国際関係学部・1年・女性

 私は歴史の勉強があまり得意ではないので、今日の授業がちゃんと理解できるか心配でした。しかし、授業を受けてみて、歴史の観点から日本のジェンダーをみることで様々な変化がみれてとても興味のわく内容でした。古代における日本は男女がほぼ対等な関係にあったのに、律令国家の誕生をきっかけに女性の地位が低下し始めたというのには驚きました。私は日本には昔から「男尊女卑」の考えがあると思っていたので、今日、事実を知ることができてよかったです。改めて歴史を紐解いてみることで現代に通じることが見えてきて、今日の授業はとても楽しかったです。歴史を少し好きになれました。

食品栄養科学部・1年・女性

 歴史背景とともに男女の立ち位置について考えること自体が初めてであった。現代において男女の性差がなくなる方向へと状況が変化していると思っていたが、古代や中世を振り返るとそれは間違いであることが分かった。女性天皇の存在や農業経営のための共働きなどの事実を踏まえると、男女における区別をつけ難い状態であったことが想像できる。一方近代では男女の違いについて法で明確に提示したり、仕事も職種によって性別の偏りがある。未知の社会を切り拓くのではなく、昔の日本を振り返り、手本とすることも大切なのではないだろうか。

薬学部・1年・女性

 古代には多くの女性が政治のリーダーとして活躍していたことにとても驚きました。ジェンダーという視点から歴史を遡ってみると、女性が男性と同等の権利を持っていた時代から、どのようにして女性が権利を奪われ、地位が低下していったのかということが浮かび上がってくるのがよく分かりました。また、そのような歴史を詳しく研究していくことで、現在問題となっている様々な場面での男女の不平等を解決する糸口を掴めるのではないかと思います。歴史の新しい見方を知ることができて面白かったです。

薬学部・1年・女性

 古代の日本では男性と女性がほとんど権力において平等であったということに驚いた。また、近代での子育て支援が意外としっかりしていて驚いた。介護についての制度など今ある制度が近代にもあることを知った。そして、ルイス・フロイスの日本覚書を読み、日本の第一印象は良いものではなく、日本人は奇抜だと思われたのだろうと思った。明治民法においては、姦通罪など、法律が男性の方が女性より権力を持つように設定してしまっているので、やはり民法を作る人達には男性しかいなかったのだろうと思った。犯罪において、男性の方が女性より殺人者数が多いのは男性の方が無意識に自分の権利を主張しすぎる傾向にあるためではないかと思う。

経営情報学部・1年・女性

 古代から現代までの間に、どのようなジェンダーがあり、どのように変化していったのかが良く分かりました。古代では、女性は今よりもずっと権力がある感じがして、また、男女それぞれの美しいと思う価値観も、今とは異なっていることに驚きました。中世では、大力の女性が普通に受け入れられ、女騎として活躍していたことに驚き、酒づくりでは、女性の仕事だったのが、江戸時代には、男の仕事となり、女性に対しての強い差別が伝わってきました。日本とヨーロッパの女性に対する文化の違いでは、日本では、女性は自由に行動し、自立しているように感じられたけれど、ヨーロッパでは、女性は大切にされ、周りから守られているように感じられ、大きな違いがあると感じました。