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教育とジェンダー(6月4日、担当:奥山和弘)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の7回目の授業が、6月4日(木)5限に行われました。

 今回は、「教育とジェンダー」に関して、元静岡県立吉原高等学校校長で、著作や講演を通じて全国で男女共同参画社会に向けた啓発活動を続けておられる奥山和弘先生をお招きして講義をしていただき、ご自身の経験や豊富な資料をもとに、メディア報道、社会教育、学校教育、などさまざまな場面での実例に即しながら、具体的に教育とジェンダーに関わる課題を多角的に考察する時間を作っていただくことができました。

 はじめに、数々のスポーツ新聞に報道された男性スポーツ選手に対する「男泣き」という表現の用例から、歴史や比較文化的考察を通じて日本の文化に潜む「枠組み」に言及されました。また、ご自分が授業を行われた千葉県の中学生に対するアンケート結果から、中学生の中に存在する男らしさ、女らしさ、あるいは理想の男性像、女性像のイメージとしての「枠組み」=ジェンダーとはどのようなものかが具体的に示され、また同様に成人への講演時のアンケート結果から、「男らしくあれ」という期待が「がんばれ」という激励のメッセージ、「女らしくあれ」という期待が「でしゃばるな」という抑制のメッセージを作り出し、抑制を求められた女性の方が男性に比べより「らしさ」の拘束力に敏感に反応してきた歴史的背景が語られました。続いて社会教育の現場での経験を踏まえて、一般の人々にいかに効果的に男女共同参画社会やジェンダーを理解してもらうかという課題に取り組んでこられたこれまでの成果が語られ、男女共同参画社会が「真の意味での(つまり、性別を問わず)「適材適所」が果たされている社会」であるという理解が重要であること、またそれは男性(女性)に「しか」できない、とする見方から、男性(女性)「でも」できる、とする社会への意識改革であるとする見解が説明されました。さらに学校教育の現場で実際に存在してきた「隠れたカリキュラム」についても豊富な事例によってその問題点がわかりやすく分析され、学校教育に求められるものとして、1.教員自身の考え方や言動が無意識に「枠組み」にとらわれていないかを顧みること、2.学校の組織、制度、慣習が「隠れたカリキュラム」になっていないか吟味すること、3.自身の表現が結果的に持つメッセージに自覚的な発信者となるよう子どもを育てること、の大切さが説かれ、「視点を相対化する力」を育むことが重要であることが示されました。

 大変多くの資料、事例を駆使した、わかりやすく、説得力に富む講義を通して、教育とジェンダーに関わる問題の根深さや多様さを浮き彫りにしていただくことができました。

 次回は、国際関係学部の藤巻光浩先生より「マイノリティとジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・女性

 学校の教育方針やルールなどがそうしようと思ったわけでもないのに、子ども達に無意識にジェンダーを肯定するような考えを与えてしまうことがあるという話を聞いて、教育現場では、良かれと思ってしたことがそのような結果につながらないように注意しなければならないのだと思った。逆に、それだけ教育現場は子ども達に強い影響を与えるのだから、男女共同参画社会を実現するための重要な役割が教育現場にはあると感じた。

国際関係学部・1年・女性

 意識としては以前の授業から「男女平等」と考えていましたが、無意識のうちに力仕事は男性、細かい作業は女性に向いていると思い込んでいた事にも気付きました。さらに、男性に良いイメージ、有利な立場が多くあるように考えていましたが、それが自殺の多さへと働きかけているマイナス面、私自身体験した中学校までの男性が先に並べられる「男女別名簿」による刷り込みも大変興味深く、新鮮な事実、考え方でした。教育は子供に道徳、価値観を伝える場であり、いかに男女平等を伝える事が重要であるかが伺えました。これから身近に潜んでいるであろう「隠れたカリキュラム」の危険性について考えていきたいです。また、実際のアンケート結果を用いた分かりやすく面白い授業でした。

国際関係学部・1年・女性

 今日の授業は導入部分の「男泣き」についての内容から始まり、とてもわかりやすかったです。私たちが密接に関わってきた教育現場(小学校、中学校、高校)には意外とジェンダーが潜んでいたのに、今まであまりそう思わなかったのは隠れたカリキュラムによる影響だったのかなぁと思いました。私は高校に入学してから初めて男女混合名簿を見ました。それまでは小中と9年間男女別名簿だったので、最初の頃は逆にすごく違和感がありました。知らないうちに‘ジェンダー’の考え方が身についてしまっていたんだなぁと思いました。しかしそれは男女共同参画社会を作っていくうえで、決して良いことではないので、学校教育においてはもっとジェンダーに配慮した取り組みをする必要があると思いました。そして意識していくことが重要であると思いました。

薬学部・1年・女性

 私たちの中に無意識にジェンダーの枠組みができてしまっているという点がポイントだと思うので、無意識に作ってしまうと自覚するだけでもまずは大きな一歩だと思った。最近は看護婦という言い方が減り、看護師という言い方が増えたのはほぼ女性しかならなかった看護師に男性も増えたという職業の選択の幅が増えた結果の一つなのだろうと思う。年配の方などには昔からの先入観があり、なかなかジェンダーに関する考え方を変えてもらうのは大変だが、これからの時代を作ることができるのはまだ何も知らない子どもたちだと思うので、昔のジェンダーに関する考え方を継いでしまうことのないように学校教育を作り上げていくことが大切だと思った。