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マイノリティとジェンダー(6月11日、担当:藤巻光浩)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の8回目の授業が、6月11日(木)5限に行われました。

 今回は国際関係学部准教授の藤巻光浩先生に「マイノリティとジェンダー」と題して、関係性概念としてのマイノリティ、マイノリティ・マジョリティ概念の持つ偶有性・流動性について論じていただきました。授業の冒頭では、受講生に「出身地」「所属学部」「血液型」などの異なる条件が与えられると、受講生の間でのマイノリティとマジョリティの関係が変化し、条件によっては同じ受講生がマイノリティにもマジョリティにも所属しうる、ということが確かめられました。続いて、アメリカ社会における「ヒスパニック・ラティーノ」の存在に見られるような「マイノリティ脅威言説」の歴史的経緯について説明がなされました。また、マイノリティ脅威言説がジェンダーと結びついた例として、第二次世界大戦中のナチスドイツや真珠湾攻撃以降のアメリカ社会に見られたプロパガンダポスターが紹介されました。そして、プロパガンダポスターから読み取れることとして、「血の神話」に基づいたアイデンティティ思考の問題点、「男性=脅威」「女性=犠牲」というマイノリティ・マジョリティ概念のジェンダー化の特徴、「内なるマイノリティ」や自らの「雑種性」への気づきの重要性、社会的・歴史的文脈における人種分類の恣意性や相対性、これらについても解説していただきました。授業の最後には、マイノリティを生み出す構造はマジョリティを生み出す構造と表裏一体の関係にあるということが指摘されました。さらに、マイノリティ・マジョリティの概念やそれらを生み出す構造を私たちが変えることができるということも強調されました。

 授業では、アメリカの歴史や人種構成、マスメディアによって刊行されたマイノリティ脅威言説の実際、日本人に馴染み深い「日本人特殊論」「日本人本質論」の概要についても触れていただきました。これらのわかりやすい事例を通じて、マイノリティ概念と社会的・歴史的文脈との具体的なつながりをより深く理解することができました。

 次回は、「労働とジェンダー」について、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事の居城舜子先生が講義される予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 マイノリティは多くの場合、そのグループの一員であることによって、社会的な偏見や差別の対象になったり、少数者を考慮しない社会制度の不備から、損失を被る社会的弱者として扱われてしまう。その一方でマジョリティは強い立場にあって、この関係はもうそこに存在しているものだと思っていたが、今日の講義でその関係は変化するということに驚いた。よく考えてみれば分かることだか、マジョリティにいる立場として勝手にマイノリティを存在化していたのかもしれない。自分もマジョリティ、マイノリティを生み出す構造に関わっているということに気づくいいきっかけとなった。

経営情報学部・1年・女性

 マイノリティとは何かや、どのような状態なのかを、学部や血液型などの例を示して、分かりやすく、面白く知り、理解しやすかったです。ヒスパニックについては、可視化されてきたのは最近というのを初めて知り驚き、区別がはっきりしないというのは、どの人種の場合も同じで、他の人種と交わった際に、子供はどちらに分類されるのかは、大きな問題であると感じました。また、ヒスパニック脅威言説では、ヒスパニックを悪者として位置づけ、管理対象とするのには、強い人種差別を感じました。マイノリティ脅威言説のジェンダー化では、ポスターで、悪者が男性化され、自分達を女性化することによって、より相手を悪く見せるように工夫されていることが分かり、これにも強い差別を感じました。

薬学部・1年・女性

 マイノリティと聞くと、どうしても迫害されているとか、弱い立場というイメージが強く、私自身は当然マジョリティだと思っていたので、条件次第でだれがマイノリティになるかは変化するという事実は私にとって新鮮で、はっとさせられました。マイノリティとは勝手に作り上げられた概念であるのに、まるで元からそう決まっていたかのように受け入れてしまっていた自分に気づくことができました。これからは自分はマジョリティ側だなどと思わずに、マジョリティやマイノリティには偶有性があることをしっかり心に留めておきたいと思いました。

薬学部・1年・女性

 自分がマジョリティかマイノリティのどちらに所属するのかは条件によって変わり、一概には判断できないとわかった。マイノリティという概念にジェンダーが深くかかわっていることを初めて知った。社会的に同化すると女性化され外れた犯罪者が男性化されるのは、今までの授業も踏まえると、女性=被害者であり女性が男性に襲われるというイメージが前提として無意識に心の中にあるのではないかと思う。また、ナチスの人種の定義の変更について、人種分類は恣意的に変わり、自分が完全な純系の人種かは分からないのだとわかった。

国際関係学部・1年・女性

 マイノリティという言葉を聞いたことはあっても知識はあまりなかったので、今回の講義でマイノリティの内容について理解することができてよかった。マイノリティは自ら変化させることができ、時代や社会の状況によっても変化していくので、マイノリティに囚われることはないのだと思うことができた。マイノリティにジェンダーの要素が関わった時、女性が犠牲、男性が脅威として表されることに違和感を持たなかった自分は、無意識のうちに現代の男女の枠組みに囚われているのだと気付いた。

食品栄養科学部・1年・女性

 日本で暮らしていると、普段から生活の中で『私はマジョリティか、マイノリティか』と意識することは無いように思う。しかし海外に目を向けてみると、民族的“多数派”や宗教的“多数派”などという生活形態そのものに深く関わりをもつものにおいて、マジョリティとマイノリティは存在していることが分かった。今まで受けてきた講義とは違い、男女の差別をメインとせずにまずはマジョリティとマイノリティを分別するという視点で物事を見て、その上で男女差がどうなっているのかを考えることができた。また、マジョリティとマイノリティは互いに常に関係し合い、与えられる条件により大きく変わるものだと知った。