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労働とジェンダー(6月18日、担当:居城舜子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の9回目の授業が、6月18日(木)5限に行われました。

 今回は、「労働とジェンダー」と題して、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか理事、静岡地方最低賃金審議会会長、焼津市男女共同参画市民会議会長、元常葉学園大学教授の居城舜子先生をお招きして講義をしていただき、最もジェンダーによる差別が激しく、他の領域への影響も大きい労働という領域の課題についてさまざまな角度から論じていただくことができました。

 授業は、「女性労働の現状と課題」が副題として掲げられ、現代日本の女性労働を取り巻く諸問題が多くの統計的データや資料に基づいて、実証的かつ批判的視点から論じられました。女性労働の現状については、現政権の成長戦略政策の第3の矢としての「女性の活躍促進」が喧伝される中、その労働政策が、女性を労働力として活用するため規制を強化する一方で、有期雇用契約や雇用形態やコース別雇用管理を温存したままで労働市場や労働時間の規制緩和を推進して格差を拡大する方向に進んでおり、結局一部の恵まれた女性だけしか男女平等が実現できない実情があらかじめ総括されました。そして、女性労働が量的に拡大傾向にありながら、男女間格差が若干縮小しても女性労働者間格差が拡大し、女性の貧困層が増加している現状の問題点がはっきりと指摘されました。具体的には、量的には拡大しながら中小企業にも増加しているコース別雇用管理と非正規雇用の増大の中でより底辺化してきている女性の労働者の実態や、先進国の中でずば抜けて大きい男女間の賃金格差、働く女性の多くが陥っているワーキングプアの深刻な実状、母子家庭に集中する労働とジェンダーの矛盾などについて、詳しく説明がなされ、法律の整備にもかかわらずまだ残るその対策の不十分さが強調されました。そして、日本型雇用と伝統的な家族・社会保障システムに横たわるジェンダーがこうした現状を生み出してきた背景であり、そのシステムが機能マヒを起こしつつある現在、積極的でフレキシキュリティ型の労働市場と共働き・共家事・育児分担型家族という新しい日本のシステムへの転換が強く求められていること、その前提となるのが、企業側だけの都合ではなく労使の対話と社会的合意であることがまとめとして論じられました。また静岡県の女性労働の特徴についての統計的分析も示され、給与水準は高いが男女差が大きく、労働分配率が低い中、女性のM字型就労パターンが非常に強固な傾向が厳しく指摘されました。最後に犬塚センター長とのやり取りの中から、これから社会へ出て労働市場に進んでいく学生たちがもっとこうした実社会の動きに敏感になり、若者と女性の立場からどんどん声を挙げていくことの大切さが強調されました。学生にとっては自分たちの将来に直結する課題を深く考えさせられる契機となる講義となりました。

 次回は犬塚センター長による「恋愛・結婚・家族とジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 今日の授業を受けて、まだまだ労働市場におけるジェンダーは厳しいということがよく分かりました。1972年に初めて、男女間の賃金の差についての裁判がおこなわれて以来、多くの裁判が行われて、法律上でも男女における賃金格差は禁止されているにも関わらず、まだまだ差別が残っており、日本の社会制度そのものを変えていく必要があると感じました。女性は現在も非正規雇用が多く、出産・育児後の再就職が困難など、課題は山積みだと思いました。自分が10、20年後どのように生きたいのか、今のうちからしっかりと考えるようにしたいです。

国際関係学部・3年・男性

 今回の講義は女性労働が大きなテーマであったが、これは女性だけの問題ではなく、男性にも関わりの大きいテーマだと思う。男女共働きが当たり前になりつつある今日の社会では、女性の昇進や賃金向上は家計の重要な支えとなる。また、昇進や賃金に男女差のある労働環境では、女性差別に目をつぶらなければならない後ろめたさを感じてしまい、男性は気持ちよく働けないだろう。女性労働の問題を改善することで男性にもメリットがもたらされることを、男性は知っておくべきだと思う。

経営情報学部・1年・女性

 何が問題なのか、一つ一つの制度について詳しく説明があり分かりやすかったです。また、正社員と派遣社員は、労働時間は同じでも、社内での周りからの扱いや、賃金の違いがあると知り、その差の大きさに驚き、差別の強さを感じました。また、男女平等については、進展しているとは言えず、一部では進展していても、まだまだ男女格差は根強く残っていて、あるいみ言葉だけで、むしろ悪化していることに驚きました。男女の差の各グラフでは、職業別に女性の比率が大きく異なり、賃金格差も大きいことは、良くなく、銀行は特に激しいと知り、今後働くときの参考になると思いました。女性労働に対する法律では、日本は罰が軽く、法律の枠が狭く、まだまだ不平等な状態が続いていると知り、女性に対する差別はなかなか無くならない難しい問題であることがよく伝わりました。

食品栄養科学部・1年・女性

 男女における差別で、労働の場における差別というものは顕著である。女性の就職率が上がっているというデータを見ると、その性差は少しずつ解消されているように思える。しかし蓋を開けてみると、正社員としての雇用よりもパートやアルバイトとして雇われるといった、働く場所と環境の違いがみられる。それはもちろん賃金における差別にもつながる。女性が活躍することのできる場を提供する、と数年前から政府は公言しているが、その実現への道のりはまだまだ長いと思う。性差を無くすことも大切だが、何かあった時にカバーをすることのできる保障など、差別による被害への対策の改善も必要である。

国際関係学部・1年・男性

 大企業で未だ消えない男女差別については顕著な問題であると感じたが、大企業だけでなくもっと身近なところでも男女差別が存在する。あるファストフード店では、「女性は接客、男性は厨房で仕事」という黙認のルールが存在し、指摘されるまで誰も男女差別と疑わなかった。いかに私たちの生活に”男女の差”が無意識的に根付いているかがよくわかった。また、「男女での収入差」についてはそれほど男女での差は無いのでは無いかというのが私の意見だ。確かに賃金の面での男女差は見過ごせ無い問題といえる。しかし、今日増加している「シングルマザー」や母子家庭にはある程度の援助金、補助金が存在していると聞くが、男性の一人親にはこうした支援が浸透してい無いというのも、ある種の男女差別であり見過ごしてはならない問題であると考える。