Top / 事業紹介 / 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」 / 2015年度「男女共同参画社会とジェンダー」恋愛・結婚・家族とジェンダー

恋愛・結婚・家族とジェンダー(6月25日、担当:犬塚協太)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の10回目の授業が、6月25日(木)5限に行われました。今回は「恋愛・結婚・家族とジェンダー」と題して、犬塚センター長が講義を行いました。

 まず、「恋愛」は決して一般的な恋という感情とは違い、歴史的、社会的現象であり、恋愛の起源に関する歴史的考察が論じられました。そして、現代の恋愛の起源は12世紀南欧の宮廷社会で、トルバドゥール(吟遊詩人)たちによって作られ歌われた騎士道の情熱恋愛にあること、そこでは騎士と既婚の貴婦人との間で展開する恋愛物語詩が流行し、やがてそれが貴族社会で実践されるゲームとしての恋愛と結婚制度との両立につながっていった過程が明らかにされました。しかし近代化に伴う恋愛の解放、そして、中産階級の新しい結婚モデルにふさわしい形で恋愛と結婚の関係性が近代になってから転換させられ、恋愛結婚イデオロギーが成立し、公私の分離と性別役割分業規範、そして愛情規範という特徴を持つ近代家族モデルが支配的になっていった歴史的経緯が説明されました。さらに、愛と生活保障と生殖の機能に収斂していった現代家族に関し、最近の調査結果から、現代日本おいては、特に女性を中心に未婚者層には近代家族の性別役割分業への期待の強化がみられること、その背景には若年世代の経済的な不安が存在している可能性があるという仮説が示されました。そして、そうした期待にも関わらず実態としては現代日本においてゼロ成長期以降性別役割分業に基づく家族モデルの実現はほぼ不可能になりつつあること、そして期待と実態のずれが拡大した結果として未婚化が急速に進行しており、その原因として最も有力なのは、やはり若者の雇用不安定化であることが、さまざまな実証データによって明らかにされました。最後にこうした現状を踏まえ、未婚化への対応として今望まれているのは、「脱ジェンダー家族」を目標とする家族形成とそれへの社会的支援制度の充実であることが論じられて一定の問題解決の方向性が示されました。若い学生の皆さんが、これからの恋愛と結婚について、ジェンダーを乗り越えながらどのように新たな形を作り上げていくべきかという課題を、身近に感じ考えいくきっかけとなる講義となりました。

 次回は、デートDVファシリテーターで立命館大学などを非常勤講師を務められている伊田広行先生をお迎えして、「性暴力とジェンダー」について講義していただく予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・女性

 私は恋愛と聞くと、ただ単純に男女が好き合うというイメージしかなかったのですが、昔と今で結婚や恋愛がどのように変わってきたのか歴史的に見ていく中で、その時代、その社会のおける、恋愛や結婚の意味が、私のイメージとはかなり違っていたので驚きました。近年は晩婚化や未婚化による少子化なども社会的な問題となっているので、特に女性が結婚後、出産後も安心して働き続けられる社会づくりを、社会全体でしていけたらいいなと思いました。

経営情報学部・1年・女性

 愛し、愛されたいという気持ちは誰にでもあるものだと思い、昔の騎士道は随分と圧された人生を送っていたと思った。恋愛というものは「愛」と「Sex」を一つにまとめあげたものであり、それを家族というコミュニティの中で行うということは、とても幸せなことであると思った。経済的な問題は、結婚と切っても切り離せない問題だと思う。わたし自身も、結婚には経済的な余裕や学力を求めるため、すごくこのデータには共感する。最近は経済成長がゼロ成長期と呼ばれ、余計に結婚が難しい世の中になると感じる。経済の良し悪しに左右されない結婚や離婚が実現できると良いと思った。

経営情報学部・1年・女性

 12世紀の恋愛とは、吟遊詩人による物語詩(バラード)であり、騎士道的情熱恋愛が基本であり、結婚後にひそかに結婚相手とは異なる身分違いの恋をすることこそ恋愛であり、ルールであると知り、たしかに、「ベルサイユのばら」などの話では、身分違いの男女の恋愛模様が描かれていて、昔は、恋愛と言えば不倫であり、今とは異なっていることが分かりました。その後は自由・平等化により、恋愛結婚が成立し、今の恋愛の形になってきた流れも分かりました。また、近代では、愛しているからといって結婚するのではなく、生殖や、女性の場合では、経済的余裕を求めている傾向があることが分かり、強いジェンダー役割を期待していることが見えてきました。現代では、性別役割分業を求める反面、経済成長率が低下し、求めるものが満たされなくなり、未婚化が進んでいることから、相手を求める条件を変えることの重要さが伝わってきました。