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性暴力とジェンダー(7月2日、担当:伊田広行)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の11回目の授業が、7月2日(木)5限に行われました。

 今回は、「性暴力とジェンダー」と題して、立命館大学の非常勤講師でデートDV防止ファシリテーターの伊田広行先生を大阪からお招きして講義をしていただきました。まず、最近の恋愛の実態としてのデートDVの定義や典型例の紹介などが行われ、ストーカーの増加などに触れられた後、恋愛が対等な関係に基づくものであるのに対して、デートDVが力による支配であり、相手の安心、安全、自由、自己決定、成長を奪う行為であることが説明され、デートDVレベルや種類、またグレーゾーンの段階への注意やリベンジポルノの問題点、なぜ相手と別れられないのかの根拠等が具体的に論じられました。

 その後は学生によるワークに移り、デートDVの事例が記されたプリントの「加害者からみた全体像」「被害者からみた全体像」をそれぞれ学生が交代しながら読み合わせ、さらに隣り合った学生同士で加害者、被害者の立場を入れ替えながら相手を説得する作業を行い、それぞれの立場の言い分を踏まえたうえで、DVが自分たちにも身近な問題であることを実感し、いかに加害者の認識をあらためていくかという加害者プログラムの重要性にも気づくための実践が行われました。

 そして、最後にまとめとして、現代の恋愛実態の背景には、そもそも現代の社会が教える普通の恋愛論自体に潜む危うさという大きな問題があることが指摘され、そこから「パートナーがいて幸せ」「愛する二人は一体」といった個人の自立を否定する価値観が生じ、さまざまな問題が生み出されていること、すなわち「主流秩序」の問題点がわかりやすく論じられました。さらに、それに対する対案として、対等な関係性を作り出すためには、これまでの恋愛観から脱却し、恋愛を相対化して、あくまでも「ひとり=自立」を基本とするシングル単位的な関係をめざし、多様な人が多様に生きられる社会を築いていくことの重要性や、とくにDVのグレーゾーンの段階から対等な関係へ適切に移行していくことの大切さが説かれました。

 豊富な具体例とわかりやすい丁寧な説明、そしてワークの実践によりDVを身近に体感できる経験も取り込んでいただいた方法を通して、現代の恋愛や結婚に潜む根本的な問題点について、出席した学生があらためて自ら認識を深めていく上で、多くの新しい視点を提供してもらえた充実した授業となりました。

 次回は、静岡市女性会館館長の川村美智先生と静岡新聞記者の石井祐子先生から「マスメディアとジェンダー」について講義が行われる予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・女性

 『DV』という言葉を思い浮かべると、一番初めに暴力行為を連想した。しかし実際は『DV』というひとくくりの中であっても、様々な種類のものが存在するということが分かった。また、加害者側の擬似体験をすることで、どれだけDVが独りよがりのものであるかを身をもって感じることができた。DVをされている人は主体性を失ってしまうということを聞き、そうなることでその人自身のアイデンティティさえ奪われてしまうのではないか。これは恋愛における問題におさまらず、人生に大きく関わってくるものだと思った。

経営情報学部・1年・女性

 今まで、DVやストーカーは、暴力的な人間性であったり、普通ではない人間がやるものだと決めつけていて、私には関係ないと考えていたが、相手を愛しているからこそ、独占したいと考えたり、相手と離れることが不安になり、暴力をふるったり束縛をしたりし結果的に相手を苦しめてしまうことを知った。よい恋愛をするには相手を尊重し、お互いが自立した対等な関係が大事だと思った。私自身も何気なく、「どこにいるの」や「だれといるの」といった言葉は使ってしまいがちだが、これらもDVにつながることを知ったので、これからは相手を信頼し、依存しすぎない関係性を築きたい。

経営情報学部・1年・女性

 DVはとても広い世界に適用され、今まで知らなかったことがたくさんあり、自分の中で世界が広がった。過度すぎる束縛がDVになると思っていたため、相手の自由を少しでも奪うとそれはもうDVになると知り、驚きとともに意見を持った。交際する同士、相手の自由は保障するべきであるが、何もかも許し、自由にするということは「交際」することにならないのでは、と思った。相手を尊敬し、大切にするということがハッピー恋愛論なのではないかと考える。2人組を組み行うワークでは、今までにない経験をすることができたから、とても貴重な体験となった。