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市民活動とジェンダー(7月16日、担当:松下光恵)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の13回目の授業が、7月16日(木)5限に行われました。

 今回は、「市民活動とジェンダー」と題して、前静岡市女性会館館長で、現在はNPO法人男女共同参画フォーラム静岡代表理事の松下光恵先生をお招きして、市民としての立場からの男女共同参画との関わり、指定管理者としての女性会館運営活動の経験と特色、その他の活動などについてさまざまな角度から講義をしていただくことができました。

 はじめに、自らの人生を振り返り、最初専業主婦として、その後仕事と家庭を両立する働く女性としてのご自身の歩みを通して、自分の悩みは個人的なことではなく、女性の自己責任とは関係ない社会のジェンダーの仕組みが生み出した課題であると気づかれた経緯が論じられました。そして、NPO活動で感じた3つの事柄~「自分が担う」という主体性、「やりたいことではなく求められることに挑む」という社会の課題やニーズを自覚した問題意識、「ボランティアではない働き方を創る」という現実を見据えた視点、が示され、生活困難リスクを抱える人が増える一方で、生産年齢人口減少により税収が低下する静岡市の現状と将来像を踏まえ、行政頼みではなく、市民として何をやるかが大切という問題意識が示されました。そして、男女共同参画社会づくりを市民の立場から実践するNPOとしてその創立から参加してこられた男女共同参画フォーラム静岡と、そのNPOが指定管理者として運営を担ってきた静岡市女性会館について、それぞれの概略が説明され、女性会館での活動の主眼を課題解決型事業においてこれまで実践してこられたさまざまな事業の内容が紹介されました。また、現在はNPO法人の責任者の立場から、本学の学生たちも参加して実施されている、家庭の置かれた経済状況のために勉強したくてもできない中学生たちへの学習支援をボランティアで行う「静岡学習支援ネットワーク」の活動や、社会的起業関心を持つ若者たちと静岡の地域問題の解決をめざす「まちみがきプロジェクト」や、生活困窮者に販売は難しいが安全な食品を届ける「フードバンクしずおか」などの新しい活動に、これまでのネットワークを活かして取り組んでおられることなどが説明されました。そして、東日本大震災で起こった男女共同参画の視点からのさまざまな問題への取組の重要性と、自らがその視点から関わってこられた支援活動の意義にも触れられた上で、最後に日頃から男女共同参画の視点を大事にし、地域に顔の見えるネットワークをつくり、支え合うことを提唱されて講義をまとめられました。

 男女共同参画社会づくりへの高い志、やりたいことに自己満足せず求められることを自ら発見して社会の課題に応えようとする姿勢、人と人とのネットワークをどんどん拡大し新しい取組に果敢にチャレンジされる方法という、3つの特徴から市民活動の原点を示していただいた有意義な講義になりました。

 次回は、「一五一会」演奏家で、GID当事者である会津里花さんをお招きして、「マイノリティとジェンダー~特別講義とミニ・コンサート」が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・3年・男性

 松下さんが得た気づきの中で私が特に重要だと感じた言葉は、責任を持って取り組まなければ結果は得られないということと、自分がやりたいことではなく誰かが必要としている活動をすることが、社会の役に立つということだ。特に男女共同参画社会を実現するためには、私たちひとりひとりが当事者としての自覚を持ち、男女それぞれが抱える不満や要望に耳を傾け、解決策を探っていくことが大切だと思うが、松下さんの言葉はこれに通じるものがあるように感じた。

国際関係学部・1年・女性

 静岡市に女性会館があることも知りませんでした。女性だけでなく、高齢者や育児中の男性、勉強をしたい子供など、市民全体が豊かに過ごせるような企画が行われていて、自分も企画・運営側に興味をもちました。男女共同参画社会を目指す中で、現状から、つい女性の立場の改善だけに目を向けがちですが、その一点だけを見るのではなく、性が関係なしに個々が伸びやかに生きられるような考え方を社会全体がもてるように、広い視野をもつ必要があるとわかりました。

経営情報学部・1年・女性

 地域活動でわたしの住む地域は、話し合いは男性で、掃除や食事などは女性が担っている。今回の話を聞き、この形態が当然だと思っていたため、小さい頃からの習慣であっても思考は投げ出さず、しっかり考えたいと思った。課題解決型は。とても難しいと思ったけれど、目指す方向としてとても魅力と感じるので、見習っていきたい。男女共同参画社会の実現のために、自らアクションを起こしていないから、一歩踏み出し動きたいと思った。

国際関係学部・1年・女性

 社会的問題に目を向け活動を積極的にされていることが大変印象的でした。また、実際の問題に注目して講座の企画・開催をし、社会的問題の解決をされていて、自分とはどこか縁のない所と感じていた市民会館を身近に感じました。シングルマザー、ニート、勉強する場のない中学生など本当に難しい問題ですが、主婦をされていた女性がこうして活動を起こしているということを知り、自分にも何か出来る事があるのではないだろうかと前向きに考えるきっかけになりました。さらに、東北大震災での女性と男性に立場の違いから起こった配慮不足が衝撃的で、これから男女共同参画社会が実現されていく中で改善されていくべきだと強く感じました。

経営情報学部・1年・女性

 松下さんが、地域活動で感じたという“自分が担うという思いの欠如”は私も共感できた。今までこの講義を受けてきて、「男女共同参画社会」について何度も考える機会はあったが、他人ごとのように考えていた部分があったように思う。男女共同参画社会が実現するようにと意見を言うだけてなく、実際に行動に移していくことが大切だと気がついた。

 松下さんが述べた「力は責任を担って初めてついてくる」というのは他の分野でも共通する考えなので、心にとめておきたい。

国際関係学部・1年・女性

 私たちは、受動的ではなくもっと能動的に動いていくべきだ、と感じた。松下先生はNPO活動を通して、先生自身がやりたいことではなく、市民に求められていることをするべきだ、と感じていらっしゃる。先生やNPO活動に携わる方々が市民に求められていることをするには、私たちが自らこういう社会を作っていきたい、という意志表示をする必要があると思う。NPO活動というのは、あくまで私たちが暮らしやすい社会を作っていく手助けをしてくれるだけで、実際社会を作っていくのは私たちだ、ということを強く感じた。