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男女共同参画社会と法制度(5月12日、担当:坂巻静佳)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の4回目の授業が、5月12日(木)5限に行われました。

 今回は国際関係学部講師の坂巻静佳先生が担当され、「男女共同参画社会と法」と題して、法律学の観点から、男女共同参画社会を築き支える法制度のあり方について、その特色と課題が論じられました。

 はじめに、今回の授業の目標として、①社会において法が果たしている役割を学ぶ、②男女共同参画社会の実現をめざす日本の法制度を概観する、③男女共同参画社会に関わる、国際法と日本の法制度との距離を理解する、という3点が示されました。それを踏まえて、まず①については、法治国家における法の機能、国際法と国内法の関係といった基礎的知識について整理された後、②について、日本における女性差別撤廃への歩みを、日本国憲法、女子差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法といった法や条約の成立・改正の流れに沿って、その内容のポイントが資料と共に詳しく説明され、日本が男女共同参画社会の実現に向けた具体的な歩みに関して、国連など国際社会の動きによって常に日本の国内の動きが後押しされて法制度が作られていった経緯が具体的に示されて、法が社会を作り動かしていくプロセスが明らかにされました。さらに男女共同参画社会基本法の成立、さらに最近の女性活躍推進法の成立の背景とその内容まで、国内外の法制度の重要な動きについて、最新の動向に関して詳細にその成果と特色が論じられました。さらに③の視点からは、残された課題として、女子差別撤廃委員会の報告書に基づき、同条約の国家報告制度における日本の報告とそれに対する委員会の見解のやり取りが詳しく紹介され、委員会最終報告に繰り返し指摘されている4つの条約に反する事項についての取組が遅れている日本の現状、特に男女の婚姻年齢の格差や女性の再婚禁止期間の不合理性、選択的夫婦別氏制度への民法改正に道を閉ざす最高裁の判決の問題点に対する厳しい委員会の見解が示されて、日本が男女共同参画社会の実現について、法制度の観点からもいまだ十分な段階に達していない実態が明確に示されました。そして、最後にまとめとして、あらためて上記の3点を理解することの重要性が論じられました。

 豊富な資料に基づいて、最新の法律制定の動きや国連の日本への指摘、最高裁の違憲判決、合憲判決などによる最近の法改正の動向などにも詳しく触れられ、わかりやすく丁寧に男女共同参画社会と法制度の関係が論じられた授業となりました。

 次回は、自然科学系の学部学生にも興味深いテーマとなる「自然科学とジェンダー」について、生物学者の山田久美子先生の講義が行われる予定です。

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受講生の声

看護学部・4年・女性

 法制度面では日本も多少の進歩を果たしてくることができたのかと思いながら講義を聞いていましたが、その変化のほとんどが、いわゆる”外圧”によってもたらされたものである、というのは、とても残念なことだと思いました。

 また、女性差別撤廃委員会からの再三の指摘に対し、的外れの反論をして改善しようとしない日本の態度は恥ずかしいと感じますし、別の講義でヘイトスピーチに関しても、日本は国際的な批判を浴びても法制化をなかなか進められずにいる、という話を聞いたことを思い出して、国際社会の中で見た時に日本人の人権意識は低すぎるのではないかと思いました。

経営情報学部・1年・女性

 産業革命は便利な生活や経済の発展を与えてくれました。しかしその一方、男女の間の格差を広げ、女性の権利や自由は徐々に制限されていってしまいました。現在は、私たち女性はあたりまえのことのように勉学に励み、選挙権を持っています。けれど、ここに至るまでに数多くの女性たちが行動を起こして女性の権利を主張し、そのおかげで今の私たちの生活があるんだと思いました。

食品栄養科学部・1年・女性

 周りに合わせるため、自分に不利益があるから、仕方なく仲間に入るという考え方は日本の国民性に表れているなと思いました。しかし、離婚後の結婚できない期間のことについては子供の問題があるということならばそれは母親の責任のみならず父親にも責任があると思うので両親ともに100日と定めるべきであり、名前においては仕事のみ(不利益が生じるときのみ)旧姓を用い家族は同じ苗字であるべきだと思います。なぜなら子供が生まれた場合どちらの名字になるかなどの問題が生じると思います。また、男性より女性の方が現実的に結婚の可能期間が短いと思うので女性が結婚年齢が早いのは合理的だと思うからです。

食品栄養科学部・1年・男性

 現在でも差別が法律で正当化されている事実があることを知った。また、日本が男女共同参画において世界的に非常に遅れているということが再確認できた。

 女性が社会で活躍することはもちろん推進されるべきであるが、女性が活躍したという理由でその会社や企業が国から恩恵を受けるという点には少し違和感を覚えた。しかし、女性の活躍によって男性も社会または家庭において活躍しやすい環境になるという話には納得した。

 まだまだ日本には男女差別が存在するが、「合理的であるから」という理由で差別を正当化しようとする考えはなくさなければならないと思った。

経営情報学部・1年・女性

 今まで、男女平等になるまでの流れを聞いてきたが、「法」という歴史の具体的な流れを聞き、男女平等という意識がなされたのは1980年代という最近の話なのだと驚き、また、私たちは昔と比べて良い時代を生きているのだと実感した。しかし、講義の中で希望の見える点と疑問に思う点があった。男女平等のための法律ができたことは非常に良いことだと思ったが、まだ改訂されていない再婚禁止機関の法や、夫婦別姓の法については残念に感じた。不満を持つ人がいるのだから、自由に選択できるようにすればよいのではないかと思う。しかし、自由にしすぎると複雑な社会になってしまうのも事実なので、そのバランスも考えないといけない点が難しいと思った。それでも私の意見としては、不満を持つ人がどれだけ少なかろうが、その人たちの気持ちを考え、よりよい社会にするために動いていくべきだと思った。また、しっかり意見があれば裁判員を選ぶこともできるので、そこまでする覚悟を持って意見を出すべきだとも感じた。

食品栄養科学部・1年・女性

 私は法律に関する昔の男女差別として、選挙権が一番印象に残っていました。しかし、昔は女性が働こうと思っても仕事の門すら開かれていなかったことに驚きました。そして、今でも続いている男女の結婚年齢の差も私は納得できません。男子が18歳な理由のひとつとして「経済状態が安定して家族を養えるようになるから」と私は聞いたことがあります。昔は確かに男子が働くものだったのでそれは理にかなっていると思いますが、現代社会は女子が男子を養っていくこともある時代です。そのため、男女間での違いは必要ないと思います。私はいつか将来、『「女子差別撤廃」という言葉・考え方が男子に対する差別である』という意見が主流になるくらい男女間の差別がなくなる時が来ることを望んでいます。