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自然科学とジェンダー(5月19日、担当:山田久美子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の5回目の授業が、5月19日(木)5限に行われました。

 今回は、個別領域ごとのジェンダーの問題を扱う各論部分の1つとして、「自然科学とジェンダー」と題して、生物学者で浜松医科大学非常勤講師の山田久美子先生に、動物学から見た性、セクシュアリティ、ジェンダーの諸問題を論じていただきました。染色体や遺伝子の視点から人間の性の分化のメカニズムが解説され、間性の存在などそのきわめて多様な実態が明らかにされて、人間の性が決して男女に二分されるものではないことが示されました。また動物と人間に共通の性指向と、人間固有の性指向のさまざまなパターンが具体的に提示され、人間固有の性指向が文化や歴史に多大の影響を受けている事実、すなわちそれがジェンダーであることがあらた強調されました。さらに、フェティシズムなどいくつかの人間特有の性指向がすべて男性のみに現れる事実から、男性に対するジェンダーによる強い抑圧がそうしたゆがみをもたらしていることが指摘された上で、日本史を例として、ジェンダーが大きな社会的変動によって変化する実態が論じられ、江戸時代以前は自由だった女性のジェンダーが、明治から第二次大戦後しばらくまでの時期において非常に抑圧的なものに変化してきたプロセスや、ジェンダーの階層による差の大きさなどが、具体的事例に基づいてわかりやすく解説されていきました。性の世界が私たちの想像以上に多様であることが明らかにされると同時に、それを男女二分法によって無理やり画一的な規範や制度の枠組みの中に押しとどめようとするジェンダーの問題点について、生物学の知見に基づき、多くの興味深い事例を取り上げて大変具体的でわかりやすく講義していただくことができました。

 次回は、さらにこうしたジェンダーの視点から、歴史全般の捉え方に存在してきたジェンダー・バイアスと、それに代わる新たな歴史的視点に立った女性史の展開について、平井和子先生による「歴史とジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・男性

 間性が法律で認められている国があることには非常に驚いた。また、染色体に関して、XXとXYは知っていたが、XXYやXXXなどいくつか存在し、また、その染色体のパターンによって心身に特異的な傾向が出現したり、不妊などの症状を引き起こしたりすることは初めて知った。

 人間以外の動物は本能による子孫繁栄のためだけに生殖行為を行っていると勝手に思い込んでしまっていたため、ホモセクシャルやバイセクシャル、遊びでの性行為が存在するなんて考えたこともなかった。また、人間以外のものを性的対象にするという人間だけの思考は興味深く感じた。

経営情報学部・1年・女性

  動物にも同性愛や両性愛があると知って驚きました。フェティシズムが動物にはなく人間のみに見られるのは、人間がアニメの中のキャラクターや靴を好むのと違って、自然界に性の対象とするようなものが動物しかないいからだと思います。しかし、自然界にも幼い動物や死体はあるのに、なぜ動物に少児愛性や死体愛がないのかわかりません。男女差別は女性が大変なことばかりではなく、昔のイギリスでは、「男性は強くなければならない」という男性にとって負担の大きいこともあったのだと知り、男女差別は男女どちらにとっても良いことはないのではないかと改めて思いました。

食品栄養科学部・1年・女性

 女の子で「ひげが生える」男性で「体が華奢すぎて嫌だ」などいろんな問題を抱えている人がいる。

 「男」だから「こう」、「女」だから「こう」と決められていることによりそれはやはり「女」は「家事」、「男」は「仕事」というジェンダーの問題の最も根本的な問題の原因であるように思えた。「人」それぞれに「個性」「感性」があるのだからとわかったようなふりをして実際は「普通」ではないと判断してしまっているけれど逆に「男」「女」と決めつけてしまっている方が「普通」ではないのかもしれないと気付いた。

 最近では‘オネエ’や‘ジェンダーレス男子’など様々な人達が活躍しているのを見ると少しずつ日本も性に寛容的になっているのかもと思った。

国際関係学部・2年・女性

 文化・時代・宗教等でジェンダーは異なり、大きな社会的変動によって変化する、というお話を伺って、今も変化の時なのかな、と思いました。かつては8回まで許されていた結婚が明治以降、女性のみ不倫が犯罪とされるようになりました。今、この時代から見ればおかしいと感じるけれど、当時はその方がいいと思われていたからそうしていたはずです。今の男女平等の世を作ろうとこんなに世界が動いている状況は、明治の人たちから見たら異常なことなのかもしれない、と思うと、その時代に合わせて変化していくことは大切なことだと思いました。今の時代に合ったジェンダー観が作り上げられていくことが必要だと感じました。

経営情報学部・1年・女性

 18年間生きてきて、ターナー症やクラインフェルター症が意外にも多いことを初めて知った。そういった方を昔のように差別していたように、周囲の理解がないと平等に生きられないのだと思った。私が興味を持ったのは人間の性指向についてであり、文化や歴史が深く関係している点に面白さを感じた。これは、人間にしかない特性だが、人間だからこそ理解しあい分かり合える社会にもできるのではないかと、自然科学という視点から見たことで改めて思えた。また、社会がジェンダーを認め始めたから一層ジェンダーというものが増えたケースもあるのではないかということに疑問を持った。そして、ジェンダーとして女性のみに焦点を当てていたが、フェティシズムにおいては男性が主なので、男性のことも考えなくてはいけないと思い、お互いが理解しあえたら良いと思った。

経営情報学部・1年・女性

 人間と動物との間に共通する性指向と共通しない性指向のどちらも存在するということに驚きました。特にクツや下着などの人間でないものを性の対象と考えたり、小児性愛や死体愛を感じるのが人間の男性のみだと知りその理由が社会の抑圧だと分かって悲しくなりました。男性ジェンダーが歪んでいるのも大きなジェンダーの問題だと感じました。性の考え方は文化や時代、宗教などで異なり社会的変動によって変化すると知り異なり方や変化の過程について興味が湧きました。