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労働とジェンダー(6月16日、担当:居城舜子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の9回目の授業が、6月16日(木)5限に行われました。

 今回は、「労働とジェンダー」と題して、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか理事、静岡地方最低賃金審議会会長、焼津市男女共同参画市民会議会長、元常葉学園大学教授の居城舜子先生をお招きして講義をしていただき、最もジェンダーによる差別が激しく、他の領域への影響も大きい労働という領域の課題について、先生のこれまでの現場の女性たちとの関わりのご経験も含めて、さまざまな角度から論じていただくことができました。

 授業は、「女性労働の現状と課題」が副題として掲げられ、現代日本の女性労働を取り巻く諸問題が多くの統計的データや資料に基づいて、実証的かつ批判的視点から論じられました。女性労働の現状については、現政権が一億総活躍社会実現・新3本の矢の経済政策を掲げて「女性活躍推進法」を制定する中、その政権の労働政策が、女性を労働力として活用するため規制を強化する一方で、多様な働き方に向けた規制緩和を推進して格差を拡大する方向に進んでおり、矛盾した政策が同時遂行され労働市場における格差が拡大する現状において、公平な女性の処遇策の模索が重要であることが最初に問題提起されました。さらに日本の女性労働の現状として、女性労働の増加と部分的平等の進展の一方で、不安定就労が拡大し、男女間、女性間の格差が拡大している状況に加え、家族の性別役割の強弱と包摂力の格差が拡大している現状のもとでは、女性労働には二重三重のさまざまな圧迫が加えられつつある問題点が鋭く指摘されました。

 そして、具体的には、未だに6割が離職しているという出産後の女性の就業継続困難の実態や、潜在的就業希望女性が315万人にも上る現実、コース別人事管理制度のもとで総合職への採用や就業継続に関する女性にとっての困難さが低い女性の管理職比率を生み出しているという構造的要因、セクハラ、マタハラが横行し、格差解消にはほど遠く先進国の中でずば抜けて大きい男女賃金格差という職場の現状、働く女性の多くが陥っているワーキングプアの深刻な実状などについて詳しく説明がなされ、格差というより性差別が定着している日本の労働現場の深刻な課題が明示されて、法律の整備にもかかわらずまだ残るその対策の不十分さが強調されました。そして、こうした労働市場における女性差別がこれまでの製造業を中心とした日本的雇用のあり方そのものに由来する構造的問題であり、小手先の改革ではそこからの脱却が難しいことを踏まえ、女性差別を克服する新しい日本の労働のシステムへの変革をめざして、政権内部や財界にもようやく起こってきた女性活躍の必要性への意識を追い風とし、労使の対話と社会的合意を前提とする方向への政策転換に向けて、現在の政策の不備を的確に批判していくことの大切さが強調されて授業が結ばれました。これから社会へ出て労働市場に進んでいく学生諸君にとっては、自分たちの将来に直結する課題を深く考えさせられる契機となる講義となりました。

 次回は、静岡市女性会館館長で、元静岡新聞社編集局文化生活部専任部長の川村美智先生と、静岡新聞社経済部記者の石井祐子先生により「マスメディアとジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・女性

 女性の、社会で生きていく厳しさという現実を目の当たりにし、現実の厳しさを感じました。小中高まではどちらかというと、先生も男子の方が叱りやすいのか、女子が得をする場面が多かったように感じます。そんな子供時代から大人になり社会に入るからこそ、女性に対する厳しさに驚き、より社会で差別を感じてしまうのではないかと思いました。もちろん、社会での女性の権利を守ることも大切です。しかし子供時代からの男女の差別をなくすことも大切だと思いました。

経営情報学部・1年・女性

 女性労働の現状について、正直まだ先のことだしと目を背けてきた部分もあるけれど今回の講義で男性と比べての賃金、条件の不平等さが明らかなことを学び、もっと真剣に考えなければならない問題なのだと気づかされました。今日本では女性の非正規率が高く、子供を連れてネットカフェを家代わりに生活している母親がいたり風俗の仕事をする人が多くなっていることを知り、全ての女性が苦痛でない生活ができるように本当の意味で「女性が輝く社会」を作っていく努力をする必要があると感じました。

国際関係学部・2年・女性

 静岡は日本の中でも改革が遅れている、ということに驚きました。また、企業に対する規制が「やらなかったら罰金」というものではなく、「できたら表彰される」とか「できなかった理由を述べる」というのは本当に規制といえるのか疑問に思います。本当に女性を増やしたいのならせめて半数以上の企業が女性比率30%を達成するまでの間だけでももっと規制を厳しくするべきだと思います。今までの雇用の仕方を変えていくのは前例がないから上手くいくかわからないし、大変なことだと思います。ドイツ式に変えることで年功序列の上の方の人たちがなんで自分たちの時からなんだ、今まではたくさんもらえていたのに、と不満を持つのもわかります。でもどこかで大きく変化させないと現状は良くなっていかないと思うので、全員で自分のことだけではなく、未来のことを考えていく必要があると思いました。

食品栄養科学部・1年・男性

 女性が社会で活躍することは重要なことであるが、義務として女性の職員や管理職の増加の目標を立てさせることが正しいとは思えない。育児休暇に関する問題を国や地域がすべて管理することは不可能であるだろう。男性も女性も平等に育児休暇をとるために、各々の会社が子育てに対して協力的になることが不可欠だと感じた。また、雇用形態の変化によって非正規雇用者が増加し、労働における賃金の格差が生じていることをより多くの人が問題視しなければならないと思った。

経営情報学部・1年・女性

 女性の労働は改善されたものだと思っていましたが、まだまだ男性とは違い、低賃金であったり、出産・育児後の再就職が難しかったり、非正規雇用が多かったりと性差別のようなものが見られ、これから社会に出ていく身として労働の厳しさを感じました。労働の優位にある男性がもっと女性労働について深刻に考え、改善をしていかなければ、男女平等参画社会は築けないと思いました。今回の授業が自分の今後についても考えるきっかけとなりましたし、労働の現実を知る良い機会となりました。これからの社会が、女性が働きやすい環境の整った社会となればいいと思いました。