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マスメディアとジェンダー(6月23日、担当:川村美智、石井祐子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の10回目の授業が、6月23日(木)5限に行われました。

 今回は、「マスメディアとジェンダー」と題して、静岡市女性会館館長で、元静岡新聞社編集局文化生活部専任部長の川村美智先生と、静岡新聞社経済部記者の石井祐子先生をお招きして、講義に対談形式を加え、新聞とテレビをはじめとするマスメディアからメソーシャルメディアを含むディア全般に関して、ジェンダーの視点からさまざまな問題を論じていただくことができました。

 まずはじめに、静岡新聞と静岡放送の事業内容の紹介DVDが上映され、新聞、テレビ、ラジオといったマスメディアの世界とはどういうものか、またそこでは、どのように記事や番組が作られているのか、といった点について具体的に概観することができました。続いて、現代のメディアの多様な形態や、メディア・リテラシーが強く求められるようになった歴史的経緯が触れられた後、1960年代以降のマスメディア研究の流れの中で、主にアメリカを中心にウーマン・リブ運動が提起したマスメディア批判の中からジェンダーの視点によるマスメディアの新たな批判的研究が生み出され、女性学も誕生していき、95年の北京での世界女性会議でメディアの項目での戦略目標が立てられた経緯が論じられました。さらに1980年代からのイギリスを中心とするカルチュラル・スタディーズによって、送り手の情報発信のあり方や受け手の属性による情報の受容における差異などについての研究が発展した経緯にも言及がなされました。そして、メディアの現状については、送り手に女性が少なく、その背景になっている時間の不規則な就労環境や長時間労働の実態が説明された後、子どもを持つ女性が働き続けられるために意識改革の重要性が述べられました。

 続いて石井先生からは、これまでの記者としての職業キャリアについての自己紹介を通して、特に出産を契機にそれまでさほど感じなかった女性がメディアで働く上での大きな男性との格差に気づいた経緯や、石井先生が現在担当されている静岡新聞金曜夕刊の新プロジェクト「こち女(こちら女性編集室)」の担当と取材活動を通して知った静岡県での女性労働の実情、特に多くの県内企業における女性活躍のための取組がまだ子育て女性のための支援に止まっており、根幹にある性別役割分業の変革にまで至っていない現状が語られました。また川村先生と石井先生との対談を通して、静岡県の女性労働者がM字カーブの就労を選択せざるを得ない背景として、とくにサービス業や販売業などで女性が出産後それまで同様に働き続けることを困難にする長時間労働の慣行の存在や、男性中心型のこうした労働慣行を変革することの重要性、そして、メディアが変わることで社会は変えられることへの気づきの大切さや、人生の選択肢を広げるためにも、男女問わず自分から就職などに際しても情報を積極的に収集することの意義などさまざまなテーマが幅広く語られました。

 マスメディア、そして労働の現場そのものからの数多くの情報や事例に基づいて、より具体的・実践的にテーマについて学生が思考を深められるわかりやすい授業を行っていただくことができました。

 次回は、デートDVファシリテーターで立命館大学などを非常勤講師を務められている伊田広行先生をお迎えして、「性暴力とジェンダー」について講義していただく予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 今回は実際に情報を扱っている方々からお話を伺うことができたので、メディアリテラシーにおける女性差別的表現がいかに多かったのか知ることができた。そして私達は普段、何気なく得る情報を鵜呑みにしてしまいがちなため、伝える側の表現方法によってどんな風にも捉えることができてしまう恐ろしさにも気付かされた。絶対的に正しいものが何なのかは分からなくても、その情報を得て自分がどう感じたのかというところを意識することで、当たり前のように通っていた情報がよく考えればおかしな事だと気付くことができるようになるのではないかと思う。情報に操作されないためにも、自分で考える事が大切だと改めて気付かされた。

経営情報学部・1年・女性

 メディアの世界でもジェンダーの大きな問題が生じていることを知り衝撃を受けました。女性記者が男性記者に比べて大幅に少ないと、情報の偏りが産まれたり男性の考え方ばかり重視されるようになってしまったりすると思うのでそのような問題を防ぐためにも女性記者がさらに多くなることを期待します。メディアの問題に関連して、テレビで女性とはこうあるべきだという誤った固定観念を放送することも見る人にものすごくジェンダーの問題の影響を与えると思うので注意すべきだと思いました。

食品栄養科学部・1年・女性

 今回授業で取り上げられた歌を聴きましたが、歌詞だけをジェンダーを考える場所で聞くと問題なのかもしれないと感じましたが、ただ歌として聞くとこういう女子もいたなぁと納得してしまいました。私は男性アイドルも女性アイドルもファンのためのフィギュアなのではないかと思いました。なので、学力も恋人もアイドルにはいらない、極端な話で「アイドルはトイレに行かない」などということになっているのではないかと思いました。そしてそれは女性アイドルの方が強く影響を受けていてジェンダーを映しているのかもしれないと感じました。また私が違和感を持ったのは『○児の母』という言葉です。言葉自体はよく聞きますが、「○人の子供がいます」という意味でなら『○児の父です』という言葉も同じだけ聞くはずですが私はあまり聞きません「○人を妊娠・出産した」という意味なら女性だけが使いますが、それは意味が違うように感じます。そうすると「○人の育児をしています、してきました」という意味に聞き手である私はとらえてしまいます。しかし、それはジェンダーなのかもしれないと思いました。

国際関係学部・2年・女性

 毎日見ているニュースを読むアナウンサーもジェンダーと結びつく、ということに驚きました。でも確かに朝の情報番組を考えてみてもメインの男性のアナウンサーは知名度もすごく高くなるし、長い期間ずっと朝の顔でいるのに、隣の「女子アナ」枠は結構すぐに変わるし、女性が朝の顔というパターンは少ないように感じます。また、出産前と出産後の男女差の感じ方の違いにも驚きました。私は今まで女性であれば出産前とか後とか関係なく男女差を感じるのだろう、と思っていたけれど、出産前はそれほど感じなかったというのは意外でした。でも、出産前と後で差を感じるような社会ではなおさら女性は結婚や出産に踏み切れなくなってしまうのではないでしょうか。子育ては女性だけの仕事ではないから、夫も協力してくれれば夜勤などもできないことではないのに、そういった体制がなかなか進まないのはやはり私たちの中に強く根付いたジェンダー感があるからだと思います。企業だけに女性が働きやすい環境を求めるのではなく、私たち自身も積極的に考えて提案していく必要性を感じました。

食品栄養科学部・1年・女性

 2世代の働く女性の話を聞くことで、確実に昔よりも女性と男性の差は縮んできているなと感じました。しかしまだ、産休や育児休暇などにおいて完全に平等というわけではないということもわかりました。最近はテレビなどのメディアで女性差別について取り上げられる機会も増えてきました。しかし取り上げられるきっかけがTwitterで話題になったから、などメディア自らが差別に気が付き発信していることは少ないと感じます。「世間で話題になっているからとりあえず特集しよう」と女性問題を取り上げるのではなく、メディア自らが女性問題について進んで取り上げてほしいです。

経営情報学部・1年・女性

 いつも見ているニュースから古い価値感が自然と見ている者に植え付けられてしまっているのだということに、今日の授業で気づかされました。女性の送り手が少ないという背景には、不規則な就労環境があり、夜働かなければならず、子供がいる女性が働くには意識改革が必要なのだということがわかりました。新聞記者で女性が出産して働ける時間が限られてきて、給料も下がるし、働く意欲がないと思われてしまうのはおかしいし、ひどい現実だと授業を聞いていて感じました。