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性(ジェンダー)と暴力(6月30日、担当:伊田広行)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の11回目の授業が、6月30日(木)5限に行われました。

 今回は、「性(ジェンダー)と暴力」と題して、立命館大学の非常勤講師でデートDV防止ファシリテーターの伊田広行先生を大阪からお招きして講義をしていただきました。まず、各種ハラスメント、DV、いじめなどには暴力=支配という共通の根っこがあり、現代社会の生きづらさの背景としてそこには「主流秩序」へのとらわれが根本にあって、それを構成するさまざまなサブ秩序のひとつとしてジェンダー秩序=家族単位システムが存在していることが指摘されました。そして社会にあふれている暴力容認間隔の中で、身近なところから社会のために、そして自分の生き方として、できることをしていくことの大切さが強調されました。

 続いて、そうした基本的な視座を踏まえて、性(ジェンダー)に関わるさまざまな暴力行為の実態が具体的な事例とともに詳しく紹介され、特に最近の恋愛の実態としてのデートDVの定義や典型例の紹介などが行われました。そして、恋愛が対等な関係に基づくものであるのに対して、デートDVが力による支配であり、相手の安心、安全、自由、自己決定、成長を奪う行為であることが説明され、デートDVレベルや種類、またグレーゾーンの段階で早くその問題性に気づいて、意識して非DVの方向へ向かうように努めることが重要であると指摘されました。

 さらに、DVと対等な恋愛との違いについて、スクランブルエッグとゆで卵、二人それぞれが別部の車を運転するケースと1台の車に二人が乗って運転を指示されるケース、といった大変わかりやすいたとえを用いて説明がなされた後、前者のカップル単位的な関係を脱却して対等な関わりの中でお互いの成長を応援し合うシングル単位的な関係へ移行することの重要性が論じられました。その他、最新のジェンダーと暴力の社会問題としてのリベンジポルノや、SNSによる暴力被害の実態についても詳細な事例が示されて、それらの危険性が指摘され、また加害者との別れ方のポイントなどにもわかりやすい説明がなされた後、DV相談の窓口紹介や今日の授業も要点が整理されて提示されました。最後は学生によるワークのためのデートDV事例の資料の解説が行われてから、質疑応答の時間が設けられ、学生からの数多くの質問にも、時間の許す限り具体的に分かりやすく回答をしていただくことができました。

 豊富な具体例とわかりやすい丁寧な説明、そして詳しい質疑応答等により、暴力という、現代の恋愛に潜む深刻で根本的なジェンダーの問題点について、出席した学生があらためて自ら認識を深めていく上で、多くの新しい視点を提供してもらえた充実した授業となりました。

 次回は、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか代表理事の松下光恵先生により「市民活動とジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 今回の授業を受けて、DV以外にも人権を侵害する暴力やハラスメントはあらゆる所に存在することを知った。1つ1つの事は知っていても、それら全てが日常の中に潜んでいて誰が加害者になっても被害者になってもおかしくないのだという危険性には気づいていなかった。だからこの社会ではどこか暴力を容認している感覚があると言われて、自分もそんな社会を形成しているうちのひとりだったのかと思い恐ろしく感じた。

 ハラスメントや暴力などをする人間の背景にはこの社会での生きづらさが関係していると聞いて、DVやストーカーに発展するのもその不安感によるものだという考えから、やはり他人事ではなく社会全体で取り組むべき問題だと感じた。

経営情報学部・1年・女性

 性と暴力に関して最近では、DV、デートDV、セクハラ、いじめ、虐待などの言葉をよく聞くけど、これらをきっかけに大きな事件へと変わっていく例がいくつもあるんだなと思った。また、DVの中には身近なところにも、幅広い範囲で様々なDVの種類があって驚いた。好きな人だからという理由で気づかないDVもあるだろうなと思った。将来結婚する相手は、時間をかけ、お互いのことを尊重し合って、知らない間に加害者、被害者になることなく、自分にあった素敵な人と結婚できるといいと思った。また、写真、SNSなどは特に注意しなければならないと思った。

食品栄養科学部・1年・女性

 私は今回の授業でまず「3回断られたらあきらめるべき」という話を聞いた段階で驚きました。私自身が、相手が嫌がっていることを感じ取ることが苦手なので、中学、高校の頃は「私は気づかないから、本当に些細な事でも少しでも嫌な時は言ってほしい」と友達には伝えていたのですが、3回というものはこれから社会に出ていく中で恋愛に関わらず、分かりやすい目安になると思いました。また、「カップルになったからといって自分の人生と相手の人生は別々である」という「2つのゆで卵」の考えにわたしはかなり衝撃を感じました。私にとってカップルとは運命共同体のような、相手の幸せこそが自分の幸せというものだったからです。私はまだ誰かとお付き合いするという経験がありませんし、「恋は盲目」という言葉があるように、冷静に2つでいられる確信はありません、ですが今回の授業で教えてもらったことを根本には持っていたいと思いました。

国際関係学部・2年・女性

 DVと聞くと暴力とか暴言とかしか思い浮かばなかったけれど、すぐにメールの返事をしないとダメ、とか今何してる?とかどこにいる?とか頻繁にチェックすることも同じものだということに驚きました。また、主流秩序を内面化してしまうことが問題ということでしたが、この秩序はだいぶ深く私たちの内面に根付いてしまっていると思います。第一印象を決める時、ほとんどこの秩序の中の偏差値が高いか低いかで見てしまいます。「あの人は美人だからいいんだ」とか「あの人はお金持ちだから多少のことは許される」とかよく考えたらおかしい話なのにこの秩序の中にいるとおかしいことになかなか気づけません。また、この秩序が恋愛にも入り込んだら、「◯◯君はたまに暴力的になるけれど、お金持ちだしイケメンだからまあいっか」と許されない暴力も受け入れてしまいかねないと思います。これはとても危険なことだと思うので、この主流秩序というものをしっかり見つめなおして、自分や自分の周りを見つめ直す必要があると感じました。

経営情報学部・1年・女性

 DVと聞くと、カップルや夫婦間での暴力のことだと思い込んでいたら、全然違くて、暴力だけじゃなく行動や言葉などでもDVになると知り、すごく怖いことだと思ったし、DVにあたってる子やDVをしてしまっている子が周りにいるんじゃないかな、と思った。束縛などは好きだから仕方ない、という考え方もあるかもしれないけどそれによって相手を傷つけたり、生活しにくくしているということ。みんなに知ってほしい。恋愛は、自分の思いだけを一方的にぶつけるだけでなく、お互いに思いやり、お互いが成長しあえる関係が素敵だなと思った。自分も、みんなも、DVにあったり、あわせたりしたくないし、DVがなくなればいいと思った。

経営情報学部・1年・女性

 普段の生活できついなと思ってしまうことが多くあるが、それが自分自身が主流秩序にとらわれてしまっているからその主流秩序の中で、上位にいる人と比べてしまい、劣等感などを感じているのだということに気づかされました。DVは暴力を受けたりするものだけだと思っていたが、それだけではなく支配されたものの成長を阻害してしまうのだと初めて知り、改めてとても怖いものだと実感しました。恋人でも夫婦でもお互いお互いそれぞれの人生があるからそれを大事にしないとだめだし、お互いの成長を応援するような関係が望ましいのだと思いました。今回の授業で学んだことを生かして自分が加害者、被害者のどちらにもならないように自分の言動に気を付けながらしていくのはもちろんですが、身近な人が加害者、被害者のどちらにもならないように意識していきたいと思いました。