Top / 事業紹介 / 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」 / 2017年度「男女共同参画社会とジェンダー」労働とジェンダー

労働とジェンダー(6月15日、担当:居城舜子)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の9回目の授業が、6月17日(木)5限に行われました。

 今回は、「労働とジェンダー」と題して、NPO法人男女共同参画フォーラムしずおか理事、元常葉学園大学教授の居城舜子先生をお招きして講義をしていただき、最もジェンダーによる差別が激しく、他の領域への影響も大きい労働という領域の課題について、さまざまな角度から論じていただくことができました。

 授業は、「女性労働の現状と課題」が副題として掲げられ、現代日本の女性労働を取り巻く諸問題が多くの統計的データや資料に基づいて、実証的かつ批判的視点から論じられました。女性労働の現状については、現政権が一億総活躍社会実現・新3本の矢の経済政策を掲げて「女性活躍推進法」を制定する中、その政権の労働政策が、女性を労働力として活用するため規制を強化する一方で、多様な働き方に向けた規制緩和を推進して格差を拡大する方向に進んでおり、矛盾した政策が同時遂行され労働市場における格差が拡大する現状において、公平な女性の処遇策の模索が重要であることが最初に問題提起されました。さらに日本の女性労働の特徴として、性別役割家族を前提としそれを内包化した労働市場の両者の影響を受けて女性の労働生活が存在しており、労働市場と家族がともに大きく変化する中で、労働と家族における平等と格差、包摂と排除の同時進行がさまざまな問題を引き起こしているという認識が鋭く示されました。

 そして、具体的には、未だに6割が離職しているという出産後の女性の就業継続困難の実態や、潜在的就業希望女性が315万人にも上る現実、コース別雇用管理のもとで総合職への女性採用率の低さや就業継続の困難さが指摘され、それらが低い女性の管理職比率を生み出しているという構造的要因が説明されました。またセクハラ、マタハラが横行し、格差解消にはほど遠く先進国の中でずば抜けて大きい男女賃金格差という職場の現状、働く女性の多くが陥っているワーキングプアの深刻な実状などについて詳しく説明がなされ、格差というより性差別が定着している日本の労働現場の深刻な課題が明示されて、法律の整備にもかかわらずまだ残るその対策の不十分さが強調されました。そして、こうした労働市場における女性差別がこれまでの日本的雇用のあり方そのものに由来する構造的問題であり、小手先の改革ではそこからの脱却が難しいことを踏まえ、女性差別を克服する新しい日本の労働のシステムへの根本的変革をめざして、労使の対話と社会的合意を達成しつつ、誰もが自立型、共働き・共家事・育児分担型家族を形成するという新システムの構築の必要性が、現在の政策の不備を的確に批判していくことの大切さとともに強調されて授業が結ばれました。

 これから社会へ出て労働市場に進んでいく学生諸君にとっては、自分たちの将来に直結する課題を深く考えさせられる契機となる講義となりました。

 次回は、静岡市女性会館館長で、元静岡新聞社編集局文化生活部専任部長の川村美智先生と、静岡新聞社経済部記者の石井祐子先生により「マスメディアとジェンダー」の講義が行われる予定です。

DSCN7462r.JPGDSCN7470.JPG