市民活動とジェンダー(6月29日、担当:松下光恵)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の11回目の授業が、6月29日(木)5限に行われました。
今回は、「市民活動とジェンダー」と題して、元静岡市女性会館館長で、現在はNPO法人男女共同参画フォーラム静岡代表理事の松下光恵先生をお招きして、市民としての立場からの男女共同参画との関わり、指定管理者としての女性会館運営活動の経験と特色、その他の活動などについてさまざまな角度から講義をしていただくことができました。
はじめに、「市民活動」の定義、日本の男女共同参画の現状等に触れられた後、自らの人生を振り返り、最初専業主婦として、その後仕事と家庭を両立する働く女性としてのご自身の歩みを通して、自分の悩みは個人的なことではなく、女性の自己責任とは関係ない社会のジェンダーの仕組みが生み出した課題であると気づかれた経緯が論じられました。そして、NPO活動で感じた3つの事柄~「自分が担う」という主体性、「やりたいことではなく求められることに挑む」という社会の課題やニーズを自覚した問題意識、「ボランティアではない働き方を創る」という現実を見据えた視点、が示され、ソーシャルビジネスに挑戦する女性などが現れてきている市民活動の最新の動向が紹介されました。そしてチャンスとして捉えた指定管理者制度による取組を通し明らかになってきたこととして、生活困難リスクを抱える人が増える一方で、生産年齢人口減少により税収が低下している静岡市の現状と将来像を踏まえ、行政頼みではなく、課題解決型事業へ挑戦することの意義が強調され、市民として何をやるかが大切という問題意識が示されました。そして、男女共同参画社会づくりを市民の立場から実践するNPOとしてその創立から参加してこられた男女共同参画フォーラム静岡と、そのNPOが指定管理者として運営を担ってきた静岡市女性会館について、それぞれの概略が説明され、女性会館での活動の主眼を課題解決型事業においてこれまで実践してこられた「女性カレッジ」や「Jo-Shizuメンターバンク」などさまざまな事業の内容が紹介されました。また、現在はNPO法人の責任者の立場から、本学の学生たちも参加して実施されている、家庭の置かれた経済状況のために勉強したくてもできない中学生たちへの学習支援をボランティアで行う「静岡学習支援ネットワーク」の活動や、社会的事業や社会的起業などに関心を持つ若者たちと静岡の地域問題の解決をめざす「地域デザイカレッジ」などの新しい活動に、これまでのネットワークを活かして取り組んでおられることなどが説明されました。そして、最後に日頃から男女共同参画の視点を大事にし、段階的に関わりながら男女共同参画を推進することの大切を強調されて講義をまとめられました。
男女共同参画社会づくりへの高い志、やりたいことに自己満足せず求められることを自ら発見して社会の課題に応えようとする姿勢、人と人とのネットワークをどんどん拡大し新しい取組に果敢にチャレンジされる方法という、3つの特徴から市民活動の原点を示していただいた有意義な講義になりました。
次回は、デートDVファシリテーターで立命館大学などを非常勤講師を務められている伊田広行先生をお迎えして、「性暴力とジェンダー」について講義していただく予定です。
受講生の声
国際関係学部・2年・女性
わたしが生まれた年の前後で、あれほど多くの、男女平等に関する法律ができていたのだということを、初めて知った。しかし松下さんが、「犬塚先生が言って下さった」と仰っていたように、そんなに急にたくさんできた、女性に関する新たな法律、権利を、直ぐに有効活用できる一般市民の女性は本当に一握りで、それはその当時に限らず、今日においても当てはまるのではないかと思った。国は、法律を作って終わりではなく、しっかり時代の流れ、社会全体の傾向をよく調査した上で、それを市民により広く、より素早く普及させる方法を、地域と協力しながらもっと考えていくべきだと思った。