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男女共同参画社会と法制度(4月26日、担当:坂巻静佳)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の2回目の授業が、4月26日(木)5限に行われました。

 今回は国際関係学部准教授の坂巻静佳先生が担当され、「男女共同参画社会と法制度」と題して、法律学の観点から、男女共同参画社会を築き支える法制度のあり方について、その特色と課題が論じられました。

 はじめに、今回の授業での3つの視点として、男女共同参画に関する日本の法制度の流れ、その国際的な評価、法の社会的機能が提示された後、まず、男女共同参画社会とジェンダーの基本的な意味付けに関する説明が行われました。そして国際法と国内法の関係、日本国内の法体系が示され、日本における政策展開のモデルが例示されて、議員提案、内閣提案、最高裁違憲判決という3つの契機の意義が論じられました。次に、日本における女性差別撤廃への歩みが、日本国憲法の制定、女子差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法の施行の3つの観点から、時系列的に説明され、続いて、男女共同参画社会の実現に向けたさまざまな取り組みがなされていることが、ナイロビ世界会議の開催から男女共同参画社会基本法の制定、さらには最近の女性活躍推進法と働き方改革までの動きを通して確認され、その詳細な解説が行われました。しかしながら、日本における近年の女性の活躍の推進等は、成長戦略の一環として展開されており、必ずしも全面的に女性の権利の保障の文脈で進められてきたものではないことには留意が必要と指摘されました。また、女性活躍推進計画の企業における不十分さや、長時間労働の解消に至っていない働き方改革の現状が、具体的事例を通してわかりやすく述べられました。また現在進行中の政治分野における男女共同参画の推進に関する法律制定の動きに関連して、国際的に見て極めて低い「指導的地位」に占める女性割合の問題点が指摘され、SDGsに掲げられたジェンダー平等に向けた国際社会の取組の必要性が強調されました。さらに最新の#MeTooのような、セクハラをはじめとする性暴力等女性の人権侵害への国際的な厳しい批判の動きに日本社会が必ずしも十分に対応できていない現状の課題があらためて確認されました。それらを踏まえ、最後に、男女共同参画社会の実現や女性差別の撤廃のためには、日本における政策展開の大きな流れを理解した上で、特に、議員提案や最高裁違憲判決を通してそれらを実現して行くために、若者が選挙において立候補者個人や政党の政策、最高裁判所裁判官の判決内容を厳しくチェックし、着実に投票行動に反映することの重要性が強調されました。

 豊富な資料に基づいて、最新の法律制定の動きや国連の日本への指摘、最近の法改正や政策の動向などにも詳しく触れられ、わかりやすく丁寧に男女共同参画社会と法制度の関係が論じられた授業となりました。

 次回は、本日の講義の冒頭部分の内容をより詳述して男女共同参画の意義とジェンダー視点の重要性について論じる、犬塚センター長による「男女共同参画社会とジェンダーの視点」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

食品栄養科学部・1年・女性

 日本では男女平等というものが遅れているというのを聞いたことがある。スウェーデンやノルウェーなどの他の先進国では既に議員の50%は女性であるということも。少しずつ男女平等の社会になるための法律ができたり、改正されたりと良くなってきてはいるがまだまだ平等といえる社会ではない。

 私自身、CMで洗剤や洗濯などの家事と関連のあるものに女性ばかりが出ているということに、この講義を聴くまで不思議に思ったり、違和感を感じたりするということはなかった。それだけ、私たちやCMを考案している人たちの中には、家事をするのは女性だという意識が根強く残っていることを改めて実感した。

 この問題を解決するためには男女の平等について常に考え、差別に気づいた人が声をあげて平等な社会を少しずつつくっていく必要があると思う。

薬学部・1年・女性

 講義終盤に先生がおっしゃった「自分たちの社会であり、自分たちで変えなくてはいけない。」という言葉に強く心を動かされた。未だ解決されない男女の差に憤りを感じつつも、どこか他人事のような意識だった。しかしその社会は、私たちが進む未来であることを考えたら、一刻も早く不平等をなくしたいと感じる。

 残された問題として挙げられた、異なる婚姻適齢、女性のみ離婚後の再婚までの期間を定められていることなどの差別が、何のために残り、なぜ今この時代に直されないのか本当に疑問である。特に、なぜ夫婦別姓が認められないのかと怒りすら覚える。そうした感情を示すのが選挙であるとわかったら、選挙に対する考え事が変わった。

 1985年からずっと変わらない、様々な差別があるのは悔しい。しかし、男女平等が叫ばれ始めた頃から、わずかながらも考え方が変化してきた現在までのことを考えると、いつかは差別がなくなり、新たな法律が出来る期待を、少しはしてもよいのかもしれない。

経営情報学部・1年・女性

 日本の歴史は長いのに基本法などの制度が整ったのは自分が生まれた年で割と最近であるということをこの基本法を学んだ時にとても驚いたのを思い出しました。実際日本は昔から男優位な社会で最近までそれが当たり前だと思われていたことを考えると常識というものは一度作られて根付いてしまうとなかなか変えることができないのだと感じました。常識から外れたことをするとよく思われないこの社会の中で男女平等の精神を唱えた人は本当にすごいと思いました。ただ、労働面では雇用機会均等法などで改善が見えてきましたが他の社会面ではまだまだ男女平等の精神が常識として根付いてはいません。法を作るだけでは変わらないからその法について知り、知ったことを発信していくのも大切なことではないかと感じました。

経営情報学部・1年・女性

 今回の話の中で一番興味を持ったのは夫婦別姓についての話だ。何回かそれについての裁判が行われていたのは知っていた。また、過去の裁判についての個人的なポイントは女性判事は全員このことについて違憲としたことだ。結果としては男性判事が多いため、多数決で合憲となる。この時点で不平等を感じるが、ここで思うのは女性側、もしくは今回訴えを起こしたのは男性であるから、名字を変える側は名字を変えるとき、仕方なく変えていることがうかがえる。

 私は印鑑を作るとき、母に「名字ではなく、下の名前で作りなさい。」と言われた。理由を聞くと名字は結婚すると変わってしまうからだそうだ。結婚するときに名字を変えるのは女性が多いのでどうしてもこういう面倒を被ってしまうのは女性だ。それは何となく不平等に感じる。政府としては「女性に名字を変えることを強制してはいない。」ということだが、男性が名字を変えることを珍しいと感じてしまうほど身の回りにはほとんどいない。

 今回、男性が裁判を起こしたということで一定数いる”男女平等”に違和感や疑問を持つ人々ももう一度夫婦別姓について考えてもらえるかもしれない。そういう意味でも今回の裁判には注目していきたい。