男女共同参画社会とジェンダーの視点(5月2日、担当:犬塚協太)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の3回目の授業が、5月2日(木)5限に行われました。
今回は犬塚センター長が担当し、授業全体の概論部分の出発点として、男女共同参画社会という言葉の意味をどう理解するか、そのポイントを「男女」「参画」「共同」の3つの言葉の解釈を中心に詳しく論じました。特に「共同」という言葉の意味を的確に理解することを通じて、これまでの「性別役割分業」社会と「男女共同参画」社会の対比や、前者から後者への転換が現代社会で強く求められていることを理解することの重要性が強調されました。さらにこれまでの性別役割分業に代表されるジェンダーという言葉の基本的な意味や、その問題点などについて、ジェンダーと生物学的性差(セックス)との区別の重要性や、時代によって変化し、社会・文化によって多様なジェンダーの特徴などに触れながら、さまざまな分野の学問的成果を基にして、具体的に解説が行われました。またとりわけ性別役割分業によって動いてきたこれまでの日本社会の問題点と限界が、男性=有償労働、女性=無償労働と固定化されることから生じる男女の実質的不平等の構造的問題として詳しく論じられ、男女共同参画社会をめざした取組の重要性というメッセージが、とりわけ「男性にとっての男女共同参画」の意義への気づきを含め、男女問わず、すべての個人がジェンダー問題に対して当事者として関わることを強調する形で語られました。
次回は、自然科学系の学部学生にも興味深いテーマとなる「自然科学とジェンダー」について、生物学者の山田久美子先生の講義が行われる予定です。
受講生の声
食品栄養科学部・1年・女性
女性が毎日、当たり前にやっている家事を年収で例えると2000万円であるということを聞いて驚いた。そう考えると、一般的な男性の年収よりもよほど大きな金額である。専業主婦と聞くと、仕事をしていなくて楽そうなイメージがあったが、実際は大変なことであることが分かった。現代の人たちは女性でも仕事をしている人が多いが、家事もほとんど女性がこなしていると考えると、女性は男性の何倍も大変なのではないかと思う。今の男性は、女性にも働いて欲しい代わりに家事を分担したいと考える人は少なくない。しかし、会社でなかなか男性が育児休暇を取れないといった問題により、女性だけが育児をしなければいけないという結果になる。
女性ばかりに家事や育児を負担させないためには、家事・育児は男女で協力してやるものだと考えるような社会をつくり、企業などが男性の育児休暇や労働時間について考慮するようにすることが重要だと思う。
看護学部・1年・女性
私は結婚したくないと思っています。理由はいろいろありますが、「結婚したら、仕事に加えて私が家事、出産したら育児までしなければいけない」という前提が自分の中にあったな、と気づきました。また、男性が家事育児をしない、というのは、会社のルールなどの社会的な仕組みによる部分もあるということを学びました。犬塚先生の、男性は出産はできないが育児はできる、というお話を聞き、確かにそうだと思いました。子どもへの影響という点で、育児は男性より女性がすべきだという意見を聞いたことがあります。私はそれに反論できませんでした。今でも明確な根拠をもって反論することはできません。でもこれも、男はこう、女はこう、というイメージや雰囲気から生まれているのかなと思いました。性別役割分業に関するお話での有償無償労働という言葉は、とても説得力があり、考えたことのない切り口だったので、興味深く分かりやすかったです。
食品栄養科学部・1年・女性
当たり前のように男性は仕事、女性は家庭と決めつけられていた昔の日本と比べると、今は法や制度が整えられてきて、平等な社会に近づいてきていると思う。でも、未だに女性管理職は珍しいという印象が残ってしまっており、男性が育児休暇を取ることに対する理解も薄いと感じる。形式的平等ではなく実質的平等を実現するには、制度を整えるだけでなく、それを積極的に利用することを社会全体で促し、性別にとらわれない考え方へと変えていく必要があると思う。性別による分業をする時代は終わり、これからは誰もが性別に関わらず活躍できる社会にしていこうという意識を1人1人が持たない限り、本当の意味での男女共同参画社会の実現は難しいと感じた。この講義を聴くまで男女共同参画社会という言葉は聞いたことがあっても具体的な意味はよく理解できていなかったので、まずは全ての人が男女共同参画社会について知り、一人一人がその当事者であることを認識することが大切だと思う。