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歴史とジェンダー(5月17日、担当:犬塚協太)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の5回目の授業が、5月17日(木)5限に行われました。

 今回は犬塚センター長が担当し、主に近代におけるジェンダーの歴史的展開と男女共同参画社会への流れを中心に、日本を含む近代社会の歴史的な動きについて講義が行われました。まず18世紀から19世紀にかけての近代社会がそれまでの社会とどのように異なる全く新しい時代であったかという点について、政治、経済、文化、社会の諸側面に関し総括的に論じられた後、特に、近代資本主義社会が公的領域と私的領域を分離し、そこに性別役割分業というジェンダーに基づく男女の役割の分離をいかに効果的になしえたかが詳細に語られました。そして、近代が女性にとってむしろ権利の抑圧や自己実現の否定という形で、実は男性との格差を拡大する社会とし機能したこと、そうした原因としてのジェンダーを女性たちが進んで受け入れるメカニズムとしてルソーらによって作りだされた母性愛、母性本能神話の社会的役割が具体的事例によって明らかにされ、その後近代国家主導で進む良妻賢母教育などによる女性への浸透のプロセスが検討されて、現代社会につながる近代社会のジェンダーの問題性と、その克服の方向としての男女共同参画社会の意義が再確認されて、講義が閉じられました。

 次回はそうした近代社会以来のジェンダーの社会化プロセスの中核を形成する「教育とジェンダー」について、奥山和弘先生の講義が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・3年・女性

 女性はキャリアの中で妊娠や出産を経験する場合があるため、社会という市場に置くのは効率が悪いと思われ、「家」という私的な空間に押しやられてきた。男性ができる仕事は男性に任せて、女性は妊娠や出産という女性にしかできない仕事に専念すべきとされてきたのである。しかし、今回の講義を聞いて、出産・妊娠に加え、いつのまにか家事や育児、介護まで女性の仕事と思われていることに問題意識を持ちました。20年間生きてきて、毎日、母が料理から洗濯、掃除、買い物といった家事をしているのを見てきたけれど、1度もそれを疑問に思ったことがなく、ゾッとしました。よく仕事から帰ってきた男性の方が疲れているシーンを見ますが、考えてみると、女性は1日中座る暇もなく自分の時間を割きながら家事労働をし、しかも無償でそれを行っているので、男性よりもよっぽどタフな仕事をこなしています。改めて母は偉大だなと思いました。

食品栄養科学部・1年・女性

 昔から性別分業というものはあったと思っていたので、18世紀から19世紀という今からあまり遠くない時期にできたものだと知って驚いた。

 女性は劣等労働とみなされ、生物学的根拠もないのに愛情があれば大丈夫だと考えられ、無償で家事や育児をさせられたということは、国は女性を道具としか感じていなかったのではないかと思う。しかも、男性はある程度決まった時間労働をすればそれで終わりだが、女性の場合はそうはいかない。家事というのは一日中あるし、育児もしている場合には夜もぐっすりと眠ることが出来ないのだ。

 そこで立ち上がり、女権宣言を訴えたオランプ・ド・グージュは処刑されてしまったというが、話し合いなどもせずに殺してしまったというのは、本当に差別が酷かったんだと思う。

 日本では最近、女性の議員の数を半数に増やすという目標が掲げられたが、半数に達しなくても罰則はないという。あまり男女平等について深刻に考えていないからではないかと思う。目標を掲げることは大切なことだと思うが、もっと深刻に考えるべき問題なのではないかと思う。