性暴力とジェンダー~学生のためのハッピー恋愛論(6月28日、担当:伊田広行)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の11回目の授業が、6月28日(木)5限に行われました。
今回は、「性暴力とジェンダー~学生のためのハッピー恋愛論」と題して、神戸大学・立命館大学・愛知淑徳大学等の非常勤講師でデートDV防止ファシリテーターの伊田広行先生を大阪からお招きして講義をしていただきました。
まず、最近の恋愛の実態としてのデートDVと性暴力全般についての概念規定が行われた後、さまざまな共同体で存在する共同体への愛を、健全な共同体愛と不健全な共同体愛に分けて整理する試みが示され、夫婦・恋人から国家間、民族間までさまざまな共同体に共通して広がる歪んだ共同体愛の実態と問題点が具体例を通して分かりやすく論じられました。その中では、DVと対等な恋愛との違いについて、スクランブルエッグとゆで卵といった大変わかりやすいたとえを用いて説明がなされた後、前者のカップル単位的な関係を脱却して対等な関わりの中でお互いの成長を応援し合うシングル単位的な関係へ移行することの重要性が強調されました。そして、それを受けて現代社会のデートDVに関し、それが力による支配であり、主流秩序への従属が強く求められる現代社会においてともすると若者が陥りがちな問題点であり、一人ひとりがリテラシー力をつけ、非暴力主義を学んで対処することの大切さが説かれました。そしてDV関係が相手の安全、自信、自由、成長を奪う行為であることが説明され、デートDVの種類(広さ)とレベル(程度)の詳細が示された上で、恋愛関係に限らず、たとえば親子関係においてもDV的な権力性、暴力性をもった愛の形が存在するなど、この問題が社会全体の不健全な共同体愛に共通する課題であることが強調されました。
そして、このような現代の恋愛実態の背景には、そもそも現代の社会が教える恋愛観、結婚観自体に「パートナーがいて幸せ」「愛する二人は一体」といった個人の自立を否定する価値観があり、それがさまざまな問題が生み出していることが論じられました。さらに、DVにならない対等な関係性を作り出すためには、そうした発想による恋愛観から脱却し、恋愛を相対化して、あくまでもお互いを応援する関係をめざすべきこと、愛の本質はギブ・アンド・ギブであって、そのために必要な問題意識が「課題の分離」という観点であり、それによって、相手に左右されない「ひとり=自立」を基本とする個人や社会のあり方をめざし、多様な人が多様に、平等に生きられる社会を築いていくことの重要性が説かれました。
講義の後、学生からのさまざまな質問にも熱心に答えていただき、現代の恋愛や夫婦、親子関係、さらには社会全体広がる暴力と共同体の根本的な問題点について、多くの新しい視点を提供してもらえた充実した授業となりました。
次回は、フェリス女学院大学教授の藤巻光浩先生により「マイノリティとジェンダー」の講義が行われる予定です。
質疑応答
授業中の質問に対し回答しきれなかった点について、伊田先生より届いたメッセージです。ぜひご参照ください。