男女共同参画社会とジェンダーの視点(4月18日、担当:犬塚協太)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の2回目の授業が、4月18日(木)5限に行われました。
今回は犬塚センター長が担当し、授業全体の概論部分の出発点として、男女共同参画社会という言葉の意味をどう理解するか、そのポイントを「男女」「参画」「共同」の3つの言葉の解釈を中心に詳しく論じました。特に「共同」という言葉の意味を的確に理解することを通じて、高等教育進学率の男女差や家庭内の役割の格差に現れているこれまでの「性別役割分業」社会と「男女共同参画」社会の対比や、前者から後者への転換が現代社会で強く求められていることを理解することの重要性が強調されました。さらに、「形式的平等」の実現に止まっている「男女平等」と対比して、「実質的平等」の実現をめざす「男女共同参画」の目標の差異が示され、ポジティブ・アクションの重要性や強調されました。そして、これまでの性別役割分業に代表されるジェンダーという言葉の基本的な意味や、それが一見変化しているようでもむしろ女性にとっても男性にとっても社会の現状とのギャップから大きな負担を強いている「新・性別役割分業」の問題性が厳しく指摘され、ジェンダーと生物学的性差(セックス)との区別の重要性を踏まえて、時代によって変化し、社会・文化によって多様なジェンダーの特徴などに触れながら、さまざまな分野の学問的成果を基にして、これからこの授業で特挙げられるさまざまなジェンダーに関わる個別テーマを丁寧に学ぶことも大切さに触れて、男女問わず、すべての個人がジェンダー問題に対して当事者として関わることを強調する形で語られました。
次回は、これまでのジェンダーから男女共同参画社会の実現が求められるようになった世界と日本の近年の動向を、男女共同参画社会づくりに関わる法制度の展開やその課題などを中心に、坂巻静佳先生(国際関係学部)により講義が行われる予定です。
受講生の声
国際関係学部・1年・女性
女性専用車両についてのお話が印象的でした。私は高校生の時痴漢にあったことがあり、友人の多くも被害を受けていました。電車に乗るのが怖くなり、男性が近くにいるだけでずっと不安な気持ちでした。ただ女として生まれただけで、こんなにも恐怖に晒される現状への怒りが収まりません。この社会には痴漢を平気で行う人がたくさんいるという事実に絶望し、男に生まれたかったと思ったこともあります。性犯罪は被害の大小に関わらず、被害者の心に一生の傷を残す絶対にあってはならない行為だと思います。犬塚先生が「不公平な現状を正すため、形式的平等を破ってでも実質的平等を守るために女性専用車両があるのは正しいことだ」とおっしゃっていたのが深く心に残りました。逆差別だという意見に対し、それは違うと思いながらも上手く説明出来なかった気持ちが救われたように感じます。この現状に怒り、どうにか改善したいという思いを絶えず持ち続けたいと思います。非常に勉強になる興味深い授業でした。
国際関係学部・1年・女性
日本が【男女共同参画社会とジェンダー】の面で大きく遅れていることは知っていたが、この講義をきいて初めて事の重大さを知った。特に心が打たれたのは電車の女性専用車両の事で、度々Twitterで「女性専用車両を使っているのはブスとオバさんで、若い美人はそんなものを使っていない」というような主張を含むツイートを見ていたからか、自分の中に恐ろしい偏見が植え付けられていたのだということに気がついた。「形式的平等を破ってでも実質的平等を守らなければならない」という先生の言葉に感動するとともに、私と同じ影響を受けた人間は大勢いるだろうと考えた。このような偏見はSNSで簡単に植えつけられてしまうが、同じくSNSで取っ払うこともできると思う。昨今欧米だけでなく、隣の国の韓国でも話題を呼んだ#MeToo運動、フェミニズム運動が日本でも受け入れられ、男女ともに声を上げることが、男女共同参画社会への第一歩だと考える。
国際関係学部・1年・女性
今回の授業で男性の育休をとるためのシステムが女性と変わらないと知ってとても驚きました。男性で育休をとる人を私は今まで見たことがなかったので、制度上男性よりも女性の方が育休をとりやすいのだと思っていました。世界で一番男女平等とされる国、アイスランドを特集したテレビ番組を見たことがあります。日本のテレビカメラの「なぜあなたは育休をとったのですか?」という質問に対して、ベビーカーを押す男性が「逆になんで育休をとらないの?」と答えていたことが衝撃的でした。今の日本では女性が総理大臣を務めることなど想像できませんが、それが当たり前になるような社会になってほしいです。そして、誰かが変えてくれるのではなく、かつてのアイスランドの女性たちのように、自分たちが声を上げなければ変わらないのだという意識をすべての人が持つ必要があると思います。
薬学部・1年・女性
現在の日本は賃金がそれほど高くないため、共働きの家庭が多いと確かに感じます。性別役割分業によって女性にだけ育児や家事の仕事が押し付けられるのはおかしいと憤りを感じましたが、男性も長時間労働、サービス残業でヘトヘトになっていると聞き、悲しくなりました。働き方改革が行われていますが、それは一部の会社だけであり、日本の家庭の苦しい状況は変わりません。男性の育休取得率を上げられるような職場づくりができるようになれば、女性だけが育児で苦しむことはないと思います。男性も育児の大変さを知ることができるので、もっと家事を分担しようという考えも生まれてくるのではないかと思います。結婚に対する不安がたくさんあると、生涯未婚率も上がってしまいどんどん少子化が進んでしまう。日本を存続させるためには性別役割分業というジェンダーの考え方を捨てることが必要であると思います。
国際関係学部・1年・女性
男女共同参画のためには、女性が社会へ進出すること、女性が働きやすい環境を作ることが重要であって、これらは女性だけの問題であるという意識があった。しかしそれが実現しないのは、男女のどちらもがジェンダーに縛られていることに原因があるので、どちらか一方が努力をすればいいというものではないと感じた。そのため、このようなことについて何か問題が発生した時、女性だけが擁護されたり、男性だけが批判を受けたりするのはあってはならないことだと思う。また、ポジティブ・アクションの一例である女性専用車両については、女性の痴漢被害を減らすだけでなく、男性が冤罪を受けるリスクを減少させる目的もあるのではないかと考える。痴漢の冤罪を晴らすことは難しいと聞いたことがあるので、男女両方にメリットのあるこの取り組みには賛成である。
薬学部・1年・女性
日本はまだまだ男女の差が多く残されていると思っていたので、男女共同参画の法律が出来て20年も経っているとは驚きました。男女という言葉に一人一人といった意味で、障がい者の方でも、LGBTの方でも、みんなといった意味が含まれていることを知れてよかったです。女性の社会進出ももっとやっていかなければならないけれど、それだけに目を向けるのではなく、様々な立場の人がもっと前に出て行きやすい世の中にしていかなくてはと思いました。女性専用車両の話で、「逆差別だ!」と言っている人の主張を耳にする機会は多かったですが、それに反論する理由は聞いたことがありませんでした。自分で選んだ性でもないのに、同じ料金を払っているのに被害にあう確率が高くなるのはおかしい、ということに気づかなかったけれど、納得しました。性別役割分業や職場の体制といったジェンダーの考え方が染みついた上で行われている日々の営みが少子化にまでつながっているというのは衝撃でした。一つの社会問題の解決が社会の様々な所に影響を与えられるとわかりました。
国際関係学部・3年・男性
これまで二十年程生きてきて、その過程における学校教育や家庭や社会での経験を通して、知らず知らずのうちに「ジェンダー」を当然のものとして認識して(植え付けられて)いたこと(ジェンダーの意識を持たせる側も無自覚にそうしていることが多い)を知り、この授業をきっかけにそのことを自覚することが出来て良かった。
また、現在批判的な意見も根強い、クォータ制や女性専用車両の導入などといった、アファーマティブアクション(積極的是正措置)について、それまでは正直なところその必要性を十分に分かっていなかったが、それを強く実感し、導入する事の合理性について納得することが出来て良かった。上の例でいくと、人々の意識の変化を待っていても、なかなか女性議員が増えない、女性の痴漢被害が減らないといった社会の現状があり、一定の強制力を持ってそうした問題の解決を図ることは、合理的な試みであると考えられるだろう。(ただし、先生の仰るように、問題が解決するまでの一時的な措置であるべきだと思うし、どこまで規制を強くするかについては議論があって然るべきだと思う)。
自分にとって、これらのことを知れたことは、今後の人生において非常に価値があることだと思った。