Top / 事業紹介 / 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」 / 2019年度「男女共同参画社会とジェンダー」男女共同参画社会と法制度

男女共同参画社会と法制度(4月25日、担当:坂巻静佳)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の3回目の授業が、4月25日(木)5限に行われました。

 今回は国際関係学部准教授の坂巻静佳先生が担当され、「男女共同参画社会と法制度」と題して、法律学の観点から、男女共同参画社会を築き支える法制度のあり方について、その変遷と課題が論じられました。

 はじめに法制度の概観として、法の機能に触れられた後、日本の国内法体系、国際法と国内法の関係が示され、日本における政策展開のモデルが例示されて、議員提案、内閣の方針決定、最高裁違憲判決という3つの契機の重要性が論じられ、さらに法的効力はなくとも非常に重要な影響力を持つ国連総会決議の意義が説明されました。次に、日本における女性差別撤廃への歩みが、日本国憲法の制定、女子差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法の施行の3つの観点から、時系列的に説明され、続いて、社会全体の変革の必要性の観点から始まった男女共同参画社会の実現に向けたさまざまな取り組みの歩みについて、ナイロビ世界会議の開催から男女共同参画社会基本法の制定、基本計画策定の義務化、さらには最近改正が進む女性活躍推進法と働き方改革までの動きを通して確認され、その詳細な解説が行われました。しかしながら、日本における近年の女性の活躍の推進等は、成長戦略の一環として展開されており、必ずしも全面的に女性の権利の保障の文脈で進められてきたものではないことには留意が必要と指摘されました。また、女性活躍推進の動きにも関わらず依然として進まないさまざまな分野での女性活躍の不十分な現状が紹介され、とくに遅れが著しい政治分野での女性活躍促進のための政治分野における男女共同参画の推進に関する法律制定の経緯や、法律だけによるのではなく、状況を変えるための投票など若者の政治参画の大切さも強調されました。また長らく法整備が求められていた性犯罪に関する刑法改正の動きも解説されたほか、その他のさまざまな国内法や国際社会の近年の動向、とくにSDGsに掲げられたジェンダー平等に向けた国際社会の取組の必要性が強調されました。さらに残された課題として、指導的地位に占める女性割合の増加に向けた積極的取組の必要性、医学部不正入試問題の背景にある医師の労働環境改善の課題、近年の#MeTooのようなセクハラをはじめとする性暴力等女性の人権侵害への厳しい批判の動きに日本社会が必ずしも十分に対応できていない現状の課題や、深刻な被害が起きながら法的保護の対象となっていない就職活動中のセクハラ問題、国連女子差別撤廃委員会からたびたび是正が求められていながらそれが進まない選択的夫婦別氏制度など、数多くの問題点が指摘されました。そして最後に、最近続いて下されている、性犯罪に関する女性被害者の実情にそぐわない無罪判決などの事例から、日本の司法の担い手がやはり男性優位な構成になってきたことの弊害が指摘され、女性の人権が守られるためにも女性自身の参画がもっと進むことが必要であることが強く主張され、それら諸点を踏まえて、男女共同参画社会の実現や女性差別の撤廃のためには、日本における政策展開の大きな流れを理解した上で、特に、議員提案や最高裁違憲判決を通してそれらを実現していくために、若者が選挙において立候補者個人や政党の政策、最高裁判所裁判官の判決内容を厳しくチェックし、着実に投票行動に反映することの重要性が強調されました。

 豊富な資料に基づいて、最新の法律制定の動きや国連の日本への指摘、最近の法改正や政策の動向などにも詳しく触れられ、わかりやすく丁寧に男女共同参画社会と法制度の関係が論じられた授業となりました。

 次回は、生物学がご専門の山田久美子先生が担当され、自然科学の立場からジェンダー問題に新たな視点を盛り込んだ「自然科学とジェンダー」の講義が行われる予定です。

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受講生の声

薬学部・1年・女性

 就活中のセクハラの問題は大学生にとって本当に身近な問題だと感じました。雇用主と労働者の関係は本当は対等でなくてはいけないのですが、雇用主の方が上であるというのが現状だと思います。弱い立場の人を守ってあげられるような法律があればいいと思いますが、先生がおっしゃっていたように女性の国会議員が非常に少ないので女性の意見もなかなか反映出来ません。女性たちが被害にあった時にすぐに相談できる機関を増やすことがまずは大切かなと思います。指導職の女性の割合も昔に比べて増加しているとは思いますが、もう少し増やすことができれば、日本の会社は変わると思います。そして、夫婦別姓を認めないことで多くの場合、女性が名字を変えることになります。これは男女不平等にあたり仕事への影響も少なからずあると感じました。

国際関係学部・1年・女性

 今回の授業で女子差別撤廃に関する法律を学び、大きな課題があると実感しました。そもそも、法律を作る場が男性優位な環境になっていることに問題があります。性犯罪の実態を知らない人が法律を作るため、女性の立場からの意見が反映されにくく根本的な改善にはなりません。性犯罪はその一瞬ではなく、その瞬間から後の被害者の人生全部を壊してしまうことを深く理解できる人が法律づくりに携わるべきだと思います。また、少子高齢化に対応するために男女共同参画を推進するという日本政府の発想にも違和感を感じます。少子高齢社会であろうがなかろうが、一人の人間としての権利は尊重されるべきです。社会的な利益は後からついてくるものです。「社会的な利益になるから女性や性的マイノリティへの差別を無くそう」という発想をまず変えなければ現状は変わらないと思います。

国際関係学部・1年・女性

 日本は、1979年に国連で採択された女子差別撤廃条約を批准するために、法律や制度を早急に整備し、男女の平等の実現を進めてきた。そのおかげで、私自身は今まで「女だから」という理由で差別を受けたという経験はあまりないし、周りでもそのような話はあまり聞かない。そのため、100%とまではいかないが、日本での男女平等はかなり達成されていると思っていた。しかし、今回の講義を受けて考えが変わった。

 実際は、教育や労働、政治など、様々な分野で女性が不当な扱いを受けたり、その場に参加すらできていないということがまだあると知った。女子差別撤廃条約の批准から30年以上経っているのに、いまだに多くの問題が残されている。私が考えるに、その原因は、政府が急ぎすぎたからではないだろうか。もちろん、男女間の差別や格差は一刻も早くなくすべきであるし、そもそもあってはならないことである。しかし、国際社会の動きに流されて、法や制度などの形式ばかりをいくら素早く整えても、現場がそのスピードに追いつけなければ、事態は改善されず、むしろ混乱が生じる可能性もある。当時の政府の対応がなければ現在の状況は今よりも悲惨であったことは容易に想像できるが、もっと段階的に対応を進めていれば、今よりも良い状況になっていたのではないかと考えている。

 前述したように、今日でも男女差別の問題は数多く存在している。そのどれもが早急に解決されるべきものであるが、課題解決のゴールだけを見てその場の勢いや一時の感情に任せて議論をするのではなく、その過程を重視しながらの冷静で慎重な議論がなされるべきである。

経営情報学部・1年・女性

 法律という「形式」的な平等を携えても、まだまだ日本は「実質」的な平等がある現状ではなく、視点を変えてみて改めて前回の授業内容と同じ点で問題があるとわかった。スウェーデンでは女性議員が48%いることと日本の10%程度とを比べると、この職業は男が就くべきだ、というジェンダーが存在していると気がついた。法律で差を埋めようとしても深く根付いたジェンダーは法律の効力を半減させるし、日本の慣習美を大事にする慣習がそれを促進させているなあ……と感じた。国民性だとかそれを尊重すること自体は美しいものだと思う。しかし、ジェンダーを考える上での国民性が大切かどうか、どう対処していくべきか、そんな視点からもジェンダーを考えてみたいとも思った。

国際関係学部・1年・女性

 日本が男女差別から目を背けていた時代のお話を聞くことができ、世界的に日本が男女差別の激しい国だと言われていることに納得しました。私は、今回のお話の中で、えるぼしマークという言葉を初めて聞きました。坂巻先生がおっしゃっていたように、私も就職を考える際には、企業にえるぼしマークのことについてしっかりと聞いておこうと思いました。坂巻先生は「私たちが気にすれば企業側も気にするし、私たちが気にしなければ企業側も気にしない」とおっしゃっていました。それは、私にとって特に印象的な言葉でした。その言葉を聞いて、私たちが、“気にする”というだけでも、男女差別撤廃の一歩につながるのではないかと思いました。また、最後の性犯罪のお話はとても残酷なものばかりで、本当に日本でこのようなことが起きているのかと信じられませんでした。しかし、さらに驚いたのはその事件に対する判決でした。納得できない理由で無罪判決が下された事件もあり、私は、そのようなことがあるから女性差別も性犯罪もなくならないのではないかと思いました。被害者は一生の傷を負うのにも関わらず、罪を犯した人が無罪になるのは納得できませんでした。「性犯罪を“知らない”人たちによって出された判決」と坂巻先生はおっしゃっていましたが、まさにその通りだと深く思いました。

薬学部・1年・女性

 他の講義でも憲法について考える機会が与えられました。戦後すぐのころから憲法では両性の平等を言っているにもかかわらず、最近までも法律の上でまで結婚年齢や再婚までの期間、夫婦別姓が認められないといった男女差があるという事実にはっとさせられました。普段生活していくと、ニュースなどで取り上げられたとしても、次の話題がトップニュースに上がるようになれば、解決していなくても当然のことのように忘れ去られてしまうということを改めて感じました。基本法というのは国が力を入れようとしているトピックなのだというのは初めて知りました。国が力を入れようとしているとは感じられないと、ニュースで見る失言や世の中の意識感覚を通して思っていました。強姦に関しては以前よりは罪が重くなったとしても、裁判で体験を語るだけでも苦痛が伴う被害者に対して、裁判官が男ばかりであったらより辛いだろうと思いました。文系に進む人が女子は多いと前に話がありましたが、それなのに法学部で裁判官や弁護士になる女性は少ないのだろうかと思いました。SDGsを何度か耳にしていますが、どんな問題に関しても大事であると思うので学んでいきたいです。