市民活動とジェンダー(6月13日、担当:松下光恵)
全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の9回目の授業が、6月13日(木)5限に行われました。
今回は、「市民活動とジェンダー」と題して、元静岡市女性会館館長で、現在はNPO法人男女共同参画フォーラム静岡代表理事の松下光恵先生をお招きして、市民としての立場からの男女共同参画との関わり、指定管理者としての女性会館運営活動の経験と特色、さらに新たな市民活動への取組などについてさまざまな角度から講義をしていただくことができました。
はじめに、日本の男女平等の現状や男女共同参画への歩み、「市民活動」の定義などに触れられた後、自らの人生を振り返り、最初専業主婦として、その後仕事と家庭を両立する働く女性としてのご自身の歩みを通して、自分の悩みは個人的なことではなく、女性の自己責任とは関係ない社会のジェンダーの仕組みが生み出した課題であると気づかれた経緯が論じられました。そしてピンチをチャンスとして捉え直した指定管理者制度による静岡市女性会館の運営経験を通して明らかになってきたこととして、生活困難リスクを抱える人が増える一方で、生産年齢人口減少により税収が低下している静岡市の現状と将来像を踏まえ、「自分たちがやりたいこと」ではなく「地域で必要とされていること」に取り組むことの大切さに気づき、課題解決型事業へ挑戦することの意義が強調され、市民として何をやるかが重要という問題意識が示されました。そして、男女共同参画社会づくりを市民の立場から実践するNPOとしてその創立から参加してこられた男女共同参画フォーラム静岡が指定管理者として運営を担ってきた静岡市女性会館について、その概略や活動内容がわかりやすく紹介され、女性会館での活動の主眼を課題解決型事業においてこれまで実践してこられた「女性カレッジ」や「Jo-Shizuメンターバンク」、最近の男性向け講座などさまざまな事業の内容が紹介されました。さらに、近年NPO法人の責任者の立場から男女共同参画の裾野を広げる目的で、静岡市の委託を受け6年間運営してこられた「地域デザインカレッジ」に関して、運動ではなく事業によって社会問題を解決するという視点に立って、ソーシャルビジネスに挑戦する人、ソーシャルセクターで働きたい人など新しい価値観、新しい働き方の拡がりを受け、新たな連携の可能性を探りながら事業によって静岡の地域問題を解決する人材の育成に努力されてきた成果について、動画を使ったさまざまな市民活動実践の具体的事例の紹介を通して、男女共同参画の裾野の広がりについての可能性と期待を示唆してもらうことができました。また、本学の学生たちも参加して実施されている、家庭の置かれた経済状況のために勉強したくてもできない中学生たちへの学習支援をボランティアで行う「静岡学習支援ネットワーク」の活動の支援にも、これまでのネットワークを活かして取り組んでおられることなどが説明されました。そして最後に、日頃から男女共同参画の視点を中心に、地域の多様な組織と連携しながら学生のうちに主体的関心をもって市民活動に関わることの大切さを強調されて講義をまとめられました。
男女共同参画社会づくりへの高い志、やりたいことに自己満足せず求められることを自ら発見して社会の課題に応えようとする姿勢、人と人とのネットワークをどんどん拡大し新しい取組に果敢にチャレンジされる方法という、3つの特徴から市民活動の原点を示していただき、ジェンダーから解放された市民による地域活動の目覚ましい成果に触れる機会をいただいた有意義な講義になりました。
次回は、デートDVファシリテーターで立命館大学非常勤講師の伊田広行先生をお迎えして、「性暴力とジェンダー」について講義していただく予定です。