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性暴力とジェンダー 学生のためのハッピー恋愛論(6月20日、担当:伊田広行)

 全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の10回目の授業が、6月20日(木)5限に行われました。

 今回は、「性暴力とジェンダー~学生のためのハッピー恋愛論」と題して、立命館大学・愛知淑徳大学等の非常勤講師でデートDV防止ファシリテーターの伊田広行先生を大阪からお招きして講義をしていただきました。

 まず、最初に今回の授業でぜひ習得してほしい最も重要な考え方として「シングル単位」の思考法を身につけることが提示されました。そして、デートDVなど自分には関係ないと思いがちな多くの学生に対して、これは誰もが加害者にも被害者にもなりうる身近な問題であることが分かりやすく論じられました。さらにどこまでがDVなのかの客観的な指標について触れられ、本当に深刻なDVは少ないように見えても、軽度の「グレーゾーン」を放置しておくとDVのレベルは上昇していくことが指摘されました。そして、DVと対等な恋愛との違いについて、スクランブルエッグとゆで卵といった大変わかりやすいたとえを用いて説明がなされた後、前者のカップル単位的な関係を脱却して対等な関わりの中でお互いの成長を応援し合うシングル単位的な関係へ、恋愛観の根本的な転換によって移行することの重要性が強調されました。そして、それを受けて現代社会のデートDVに関し、それが力による支配であり、主流秩序への従属が強く求められる現代社会においてともすると若者が陥りがちな問題点であり、一人ひとりがリテラシー力をつけて対処することの大切さが説かれました。そしてDV関係が相手の安全、自信、自由、成長を奪う行為であることが説明され、デートDVの種類(広さ)とレベル(程度)の詳細が示された上で、恋愛関係に限らず、たとえば親子関係においてもDV的な権力性、暴力性をもった愛の形が存在するなど、この問題が社会全体の不健全な共同体愛に共通する課題であることが強調されました。

 そして、このような現代の恋愛実態の背景には、そもそも現代の社会が教える恋愛観、結婚観自体に「パートナーがいて幸せ」「愛する二人は一体」といった個人の自立を否定する価値観があり、それがさまざまな問題が生み出していることが論じられました。さらに、DVにならない対等な関係性を作り出すためには、そうした発想による恋愛観から脱却し、何よりも「性的同意」を最重要視して、恋愛を相対化することで、あくまでもお互いを応援する関係をめざすべきこと、愛の本質はギブ・アンド・ギブであって、そのために必要な問題意識がアドラー心理学における「課題の分離」という観点であり、それによって、相手に左右されない「ひとり=自立」を基本とする個人や社会のあり方をめざし、主流秩序に支配されず、多様な人が多様に、平等に生きられる社会を築いていくことの重要性が説かれました。 講義の後、学生からのさまざまな質問にも熱心に答えていただき、現代の恋愛や夫婦、親子関係、さらには社会全体広がる暴力と共同体の根本的な問題点について、多くの新しい視点を提供してもらえた充実した授業となりました。

 次回は、本学看護学部准教授の藤田景子先生により「リプロダクティブ・ヘルス/ライツとジェンダー」について講義が行われる予定です。

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受講生の声

国際関係学部・1年・女性

 今日のお話の中で、「誰もがデートDVの加害者になる可能性がある」という言葉が特に印象的でした。男性だから…女性だから…ということは関係なしに、全員が気を付けなければならないことだなと深く思いました。伊田先生は、スクランブルエッグとゆで卵の関係についても説明してくださいました。この際に、どんなに親しい相手でも、境界線を作ることはとても大切なことなのだと思いました。私は、スクランブルエッグの関係では、相手を自分の所有物のように見てしまう人もいると思います。特に恋人同士のスクランブルエッグの関係では、そのような人が多いと思います。しかし、そうするのではなく、ゆで卵の関係で自分の基準を尊重しすぎず、プライバシーを大切にすることこそが、人との良い関係を築くために必要なことなのだと感じました。また、これは、恋人同士だけでなく友人関係についても同じことが言えると思いました。どんなに親しい友人でも、ある程度の境界を作り、相手と自分は別々であると認識することも時と場合によっては重要なのだということが分かりました。

 今回のお話を聞き、日頃の言動には十分に注意しようと改めて思いました。DV加害者になってしまわないように、相手を傷つけていないかということを念頭に置き、発言をしたいです。また、これからは、先生のおっしゃっていたゆで卵の関係を意識し良い人間関係を築いていきたいと思いました。