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2016年度男女共同参画推進センター主催講演会が開催されました

 2016年度男女共同参画推進センター主催講演会「結婚・家族とジェンダー~人口問題の視点から~」が、6月2日(木)午後4時20分~5時50分、一般教育棟2103講義室にて開催されました。

 この講演会は、本学の学生、教職員の皆さんを対象に、あまりなじみのないジェンダーというテーマについて、結婚や家族という身近な領域の問題から深く考えていただく機会を提供するため、本学学長の鬼頭宏先生を特別講師にお迎えし、「結婚・家族とジェンダー~人口問題の視点から~」と題して、結婚・家族の変化とそこに強い影響を与えているジェンダーの役割について、ご専門の歴史人口学のお立場から人口問題という視点を通して考察していただくという内容で行われたものです。また全学共通科目「男女共同参画社会とジェンダー」の授業の一環としても位置付けられています。

 出席者は学生、教職員合わせておよそ140人。教室はほぼ満席に近い盛況ぶりとなりました。

 まず、前半では冒頭に仕事と結婚に関する簡単な質問で男女学生と楽しくやり取りをされた後、それらの答えの男女差に触れながら、人口現象、人口減少いずれにおいても、その背景には男女の差、つまりジェンダーが大きく存在していることが指摘され、それに関連する人口学的なデータが示されました。そして、平均寿命の男女較差の歴史的変化や、江戸時代における死亡率の男女差などのデータに基づきながら、それらの差が決して自然現象ではなく、社会的要因によるジェンダー問題がその背景にあることが丁寧に説明されました。さらにそのジェンダー問題を克服するために国連のカイロ会議以来重視されているリプロダクティブ・ヘルスと女性のエンパワーメントの重要性が強調されました。

 そして後半では、現在日本社会において重大な課題となっている少子化に焦点を当て、それが日本において避けがたい必然の現象だったという観点から、さまざまなデータを用いて、①社会が豊かになると出生率は下がること、②主要先進国では1970年代半ばから集中して少子化が進んだこと、③それにも関わらず、その後現在までに出生率の回復をある程度果たした国と低出生率が続いている国の2つのグループが分かれてきたこと、が指摘され、そうした分化の原因として、それぞれの国の家族類型、ひいては性別分業といったジェンダーのあり方が大きな影響を与えていることが明確に論じられました。特にエマニュエル・トッドの著名なヨーロッパの家族類型から酒井順子の「儒教と負け犬」まで、さまざまな視点を駆使して、日本、韓国、中国といった東アジア社会を強く規定している性別分業、家父長制家族のジェンダーの問題点が明らかにされた後、最後に少子化の克服を目指す上で、その背景にあるジェンダー観の転換が今こそ求められていることが強調され、全体が締めくくられました。

 数多くの歴史人口学的データから現代の人口関連の統計データや各種の調査結果を縦横に用いた丁寧な実証的分析を基に、現代日本の結婚や家族をめぐる社会問題の解決を、人口問題の視点からジェンダーを鍵概念として用いて図っていこうとされる社会科学研究者としての学問的姿勢に、多くの学生はもとより、参加した教員や職員にとっても貴重な知的刺激を受けることができた充実した講演会となりました。

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